<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 研究炉等
<小項目> わが国の原子力開発機関の研究炉
<タイトル>
JMTR (03-04-02-04)

<概要>
 JMTRは、高い中性子束が得られるように設計され、短時間で照射試験を行うことができる熱出力50MW(定格熱出力)、軽水減速冷却タンク型の材料試験用原子炉である。この高い中性子束を利用して原子炉材料および燃料等の各種試料の照射並びにラジオアイソトープの生産等の共同利用運転を行っており、炉心全体で約60か所の照射孔での同時照射が可能である。JMTRは93%濃縮ウラン燃料を使用していたが、米国の核不拡散政策に対応して1994年1月から20%濃縮ウランを用いたわが国最初の全炉心シリサイド燃料に変更し運転を実施した。このシリサイド燃料に可燃性中性子吸収体であるカドミウムワイヤを取りつけ、さらに1体あたりのウラン量や炉心燃料体数を増量することによって、従来の12日間連続運転から31日間連続運転とすることが可能となり、1サイクル30日間とする年間6サイクルの運転となった。2006年8月までに通算165サイクルの運転を行った。現在、経年化の著しい設備や機器の一部更新などJMTRの改修と2011年度の再稼働に向けた準備が進められている。
<更新年月>
2007年07月   

<本文>
1.はじめに
 JMTR(Japan Materials Testing Reactor)は、動力炉国産化技術の確立と国産動力炉の開発のための原子炉用材料、燃料等の照射試験を行うとともに、ラジオアイソトープの生産等も行うことを目的とした軽水減速冷却タンク型の材料試験用原子炉であり、熱出力は50MW、最大熱中性子束は4×10/m2・sである。原子炉とホットラボ施設が隣接(直結)しており、照射後試験や再照射試験が容易にできる特徴を有する原子炉施設である。1965年に日本原子力研究所大洗研究所(現日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター)において建設が開始され、1968年3月には初臨界に達した。1970年から照射試験および照射後試験等の共同利用が実施されており、2006年8月末までに通算165サイクルの運転を行った。現在、経年化の著しい設備や機器の一部更新などJMTRの改修と2011年度からの再稼働に向けた準備が進められている。
 JMTRには、キャプセル照射設備、水力ラビット照射設備、出力急昇試験設備およびキャプセル照射設備等、多くの照射設備がある。また、原子炉建家に付設して主にJMTRで照射した試料の照射後試験を行うホットラボ施設があり、1967年から建設が開始され、1971年から照射後試験を開始した。さらに、照射後試験項目を増加させるため1982年に材料試験用鉄セルを設置している。
2.原子炉本体
 原子炉本体は、原子炉圧力容器、炉心部およびこれらを設置する炉プールから構成されている。表1にJMTRの主要特性を示す。また、図1にJMTRとその関連施設を示す。原子炉圧力容器(以下「炉容器」という)は、直径3m×高さ9.5mのステンレス鋼製であり、直径6mおよび深さ12.6mの炉プール内に据え付けられている。炉容器内には、原子炉運転用の燃料要素をはじめ反射体要素や、照射装置の炉内管等が納められている炉心部がある。炉心部を流れる一次冷却水は減速材としての役割も併せ持ち、炉容器上方から下向きに通り抜け、約1.5MPaに加圧されている。
 炉容器の上部には、キャプセル照射設備、水カラビット照射設備、出力急昇試験設備等の挿入、取り出し口が設けられている。
 また、照射利用に便利なように制御棒駆動装置は炉心上部設置を避けて炉容器の底部に設けられ、炉心下方から制御棒を駆動する機構となっている。原子炉の炉容器構造を図2に示す。
 炉心部は直径1.56m、実効高さ0.75mの円筒形で、燃料要素、制御要素、反射体要素(材質:ベリリウムおよびアルミニウム)、H型ベリリウム枠、ガンマ線遮へい板、内部タンク等から構成されている。
 炉心に装荷される燃料要素は板状型燃料29体で、そのうち標準燃料要素が24体、制御棒の中性子吸収体と機械的に結合されている燃料フォロワが5体である。図3に炉心配置図を示す。
3.照射設備
 照射設備には、照射希望条件に合わせて炉心装荷位置が選択できるキャプセル照射設備、設置位置が固定されている水力ラビット照射設備および出力急昇試験設備がある。照射装置の概要を表2に示す。
 キャプセル照射設備は同時に約60本まで照射キャプセルを照射することができる。そのうち約25本は炉容器を貫通して計測または制御のための信号を取り出すことができる計装付照射キャプセルであり、照射温度の制御や照射時の条件の記録等、精度の高い照射実験が可能である。JMTRには種々の環境条件下で照射試験を行うことができる様々なタイプの照射キャプセルが揃っている。原子炉出力に依存しないで照射温度を一定に保つ、逆に原子炉出力一定の条件下で任意に照射温度を変化させる、熱中性子吸収材を試料の周りに配置して熱中性子を遮断した照射を行うことができる、水質を制御し高温高圧水環境下での照射を行う等、多様な実験の要求に対応した種々の照射キャプセルが利用できる。照射キャプセルは、小型の試料の照射に適しており、燃料試料や材料試料の照射のほか、ラジオアイソトープの製造に利用される。JMTRで製造されるラジオアイソトープは主にリン32、コバルト60およびイリジウム192、レニウム188、イッテリビウム169で、工業用および医療用に広く利用されている。JMTRに使用される主要照射キャプセルを表3に、環境制御照射設備等を用いた軽水炉材料の照射試験例を図4に示す。水力ラビット照射設備は1基あり、JMTRの運転を停止することなく、水流によって直径32mm長さ150mmのアルミニウムまたはステンレス製のホルダー(これをラビットと称す)内に納められた照射試料を必要に応じて炉心に挿入したり取り出すことができる。このような小型の照射試料は搬出および出荷が容易なことから、短時間の照射に適しており、短寿命のラジオアイソトープの製造や大学の基礎研究等に利用されている。
 出力急昇試験設備は、軽水炉燃料のふるまいの解明、破損しきい値の確認、健全性確証等を行うものであり、BOCA照射設備とOSF-1照射設備を組み合わせた構成になっている。
 BOCA照射設備は、沸騰水キャプセル(Boiling Water Capsule:以下「BOCA」と略す)本体、キャプセル制御装置およびヘリウム3出力可変装置から構成されており、BOCA内には全長約40cmの軽水炉燃料や試料が装荷され、BWRと同等の冷却材圧力および温度条件下で照射される。照射される燃料棒は、キャプセル周囲のヘリウム3ガス圧力を制御し熱中性子束を変化させることによって燃料棒の線出力密度を急速に変化させている。
 OSF-1照射設備は、BOCA照射設備と組み合わせてBOCAの除熱を行うとともにJMTR運転中にBOCAの交換を行うことができ、JMTRの冷却系とは別に独立した冷却系を備えたインパイルループ照射設備である。
4.ホットラボ施設
 各種照射後試験を行うホットラボ施設は、JMTRで照射した照射済試料を直接搬入出来るようJMTRとカナルで接続されており、強い放射線を遮へいするためのコンクリート、鉛、鉄等の壁で囲まれたホットセルと、これに付属する種々の設備で構成されている。
 ホットセルとしては、燃料試験用のコンクリートセル8基および顕微鏡鉛セル4基、材料試験用の鉛セル7基および鉄セル5基並びにトリチウム取扱い用グローブボックス5基がある。
 ホットセルには照射後試験用の各種機器が据え付けられており、強い放射線を出す照射済試料の取扱いおよび機器の操作は、マニピュレータ、トング等の遠隔操作装置によって鉛入りの遮へいガラス越しに行われている。照射された試料として、軽水炉、高温ガス炉等の研究開発のための燃料試料および材料試料並びに核融合炉開発のための材料試料等がある。照射誘起応力腐食割れ(IASCC)研究等のためのデータ取得など、それぞれの研究目的に応じた金相試験や破壊強度試験等の広範囲な照射後試験を行うことができる。
 これまでの成果を表4に示す。JMTRのあゆみと主な照射利用を図5に示す。現在までに約9千件の各種照射試験が行われ、わが国の軽水炉利用を支える基盤施設としての役割を果たすとともに、大学等の基礎研究等にも広く利用されてきた。図6は、1969年のJMTRの供用開始から2004年度までの軽水炉関連の照射利用の状況である。JMTRにおける近年の軽水炉関連の照射利用は、軽水炉の経済性向上や高経年化に関する課題が中心であり、図7に示すように2000〜2004年度の利用の約45パーセントである。
5.JMTRの改修と再稼働に向けて
 文部科学省の「科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会」(2006年7月28日)における「原子力に関する研究開発の推進方策について」の報告書において、「材料照射試験については、JMTRにおいて行われる各種の照射試験が、基礎基盤研究から軽水炉の高経年化に伴う原子炉材料の挙動評価や燃料の高燃焼度化の評価に至るまでの幅広い領域で活用され、その研究開発や人材育成における成果が非常に大きなものであること、また、原子力規制行政庁等に照射ニーズが存在することを考慮すれば、今後、わが国における研究開発の基礎基盤研究を担う施設として、必要な更新を行い活用していくことを検討すべきである。しかしながら、その際には、JMTRの再稼働に必要な改修費用や運用コストは、安全の確保を大前提としつつも、可能な限りの合理化を行うことはもちろん、医療用アイソトープ製造事業者、シリコン半導体製造業者等の幅広いユーザーの確保や利用料金体系の適切な設定によって、国費の投入額が可能な限り低減されるよう配慮すべきである。」との評価を受けた(図8参照)。これを受けて、2007年度から経年化の著しい設備や機器の一部更新などJMTRの設備保全対策を行い、2011年度から再稼動し安全・安定かつ効率的な運転によりこれらの研究等の推進に貢献することになった。原子力安全・保安院は、わが国として原子力安全研究の技術的基盤を確保するため、2006年度より安全研究事業「軽水炉燃材料詳細健全性調査」を開始しており、2007年度より、JMTRへの試験装置の具体的な整備を開始することとなった。
(前回更新:2004年7月)
<図/表>
表1 JMTRの主要特性
表2 JMTR照射装置の概要
表3 主な照射キャプセル
表4 JMTRのこれまでの成果
図1 JMTRとその関連施設
図2 JMTRの炉容器構造
図3 JMTR炉心配置図
図4 環境制御照射設備等を用いた軽水炉材料の照射試験の例
図5 JMTRのあゆみと主な照射利用
図6 JMTRでの軽水炉関連の照射利用(1969〜2004年度)
図7 JMTRでの最近の照射利用状況
図8 JMTRに期待される役割

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<関連タイトル>
原子炉安全性研究炉(NSRR) (03-04-02-05)
NUCEF (03-04-02-06)
高温工学試験研究炉(HTTR) (03-04-02-07)
試験研究炉用ウラン燃料 (04-06-01-04)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所大洗研究所材料試験炉部:JMTR照射ハンドブック、JAERI-M、94-023(1994)
(2)日本原子力研究所大洗研究所:JMTRパンフレット(2003)
(3)日本原子力研究所大洗研究所:JMTRパンフレット(ルーズリーフ式)
(4)日本原子力研究所研究炉部・材料試験炉部:第1回研究炉・試験炉利用成果発表会報告集、JAERI-Conf、98-007(1998)
(5)文部科学省ホームページ:原子力分野の研究開発に関する委員会(第16回)、配布資料3-1(平成18年5月25日)、我が国における材料試験用原子炉の役割とJMTRのあり方等に関する検討報告書、JMTR利用検討委員会(平成18年3月)、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/shiryo/012/06061222/001.htm
(6)原子力委員会ホームページ:第2回原子力委員会、資料第1-3号、平成19年度の原子力関係予算案について(文部科学省)(平成18年1月16日)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2007/siryo02/siryo13.pdf
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