<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 研究炉等
<小項目> わが国の原子力開発機関の研究炉
<タイトル>
JRR-2 (03-04-02-01)

<概要>
 JRR−2は大型・高性能の研究用原子炉として日本原子力研究所東海研究所(現日本原子力研究開発機構原子力科学研究所)に建設され、1960年10月1日初臨界に到達した。1962年最大熱出力10MWでの試験運転に成功し、1964年から共同利用運転を開始した。JRR-2は、中性子ビーム実験、原子炉用燃料・材料の照射実験、ラジオアイソトープの生産、シリコン照射、放射化分析等に利用された。1994年からはガンの治療のための医療照射も行われる等多くの研究者、実験者等に利用されてきた。しかし、36年余にわたって活躍したJRR−2の使命は達成され、医療照射についてもJRR−4に移行できる計画が進捗していることなどから、1997年12月19日に原子炉を永久停止(閉鎖)し、1997年5月には科技庁(現文部科学省)に解体届を提出して、解体に着手した。2006年2月には、原子炉本体の密閉措置及び原子炉冷却系統施設の機器類撤去工事等を終了し、現在は、将来の解体工事に備え残存施設を維持管理している。
<更新年月>
2006年08月   

<本文>
1.はじめに
 JRR-2は米国アルゴンヌ国立研究所のCP-5型原子炉を原型としたウラン・アルミ合金板状燃料要素を用いた重水減速重水冷却型の日本で2番目に造られた研究用原子炉である。最大熱出力10MW、最大熱中性子束2E14n/cm2・secを目標として建設され、1959年末建設が完了した。1960年初めから各部の機能試験に入り、1960年10月1日午前4時49分に初臨界となった。原子炉本体は円筒に近い不等辺14角形で、外壁はアルミニウム板で覆われている。総重量は基礎を含めて約650tであり、重水ポンプ室の天井にあたる1階の鉄筋コンクリート床上に据え付けられている。原子炉本体の中心にはアルミニウム製重水タンクがある。重水タンクの中心には燃料要素24本を固定するための座(グリッドプレート)があり、6本の制御棒は蜂の巣(ハニカム)状に配置されている。重水タンクの外側にはアルミニウム製の熱遮へい用の軽水タンクがある。軽水タンクの中にはステンレス鋼板6枚があり軽水と併せて、原子炉からのガンマ線の熱遮へいをしている。軽水タンクの周囲は厚さ2mの重コンクリートであり、原子炉で発生する放射線を遮へいしている。
2.原子炉の構成
 JRR-2は、原子炉本体の他に、主に1次冷却系(重水)、2次冷却系(軽水)、ヘリウム系、熱遮へい軽水系および非常冷却系からなる冷却系統施設、核計装およびプロセス計装からなる計測制御系統施設、放射線管理施設ならびにその他の設備で構成されている。
 原子炉本体には実験研究、RI生産などのために、水平実験孔(主に中性子ビーム実験に使用、4インチ径×4孔、6インチ径×3孔、7.5インチ径×2孔、11インチ径×2孔、6インチ径貫通孔×2孔の合計13孔)、熱中性子柱(サーマルコラム;「脳腫瘍医療照射」に利用)、垂直実験孔(各種材料照射、シリコン照射及びラジオアイソトープ生産等に使用、燃料領域4孔;重水反射体領域5孔の合計9孔)、炉心内照射設備(円筒燃料の中心にキャプセルを挿入し各種材料照射に使用;インコア照射孔×24本)、気送管照射設備(原子炉運転中の材料挿入取出が必要な短時間照射に使用;2インチ径×1本、1インチ径×1本の合計2本)等があり、様々な共同利用に供されてきた。JRR-2諸元を表1に、JRR-2原子炉建屋概略を図1に、原子炉水平断面を図2に示す。
3.燃料
 初期の燃料要素は20%濃縮ウランを使用していたが、燃料板芯材中のウラン分布の均一性に問題があり、この問題を解決するため1962年4月に90%濃縮ウラン燃料要素の使用へ移行した。1966年からはそれ迄米国B&W社(Babcock&Wilcox Co.)から輸入していた燃料を国産化し、使用を開始した。続いて燃料の中心部分に照射孔を持つ円筒型燃料を制作し、炉心のうち2体は円筒型燃料を使用する構成とし、燃料・材料照射に活用した。1974年9月〜1975年9月の炉体改修工事の後、1975年11月からは93%濃縮ウラン燃料要素を使用し1体あたりのウラン量も増量する等性能の向上をはかった。その後米国による核不拡散政策に対応した濃縮度低減化対策として、1987年11月から1996年12月の原子炉閉鎖まで45%濃縮ウラン燃料要素を使用した。このウラン濃縮度低減化に対応するため、高密度燃料を使用することになり、以降仏国CERCA社(Compagnie pour I’Etude et la Realisation de Combustibles Atomiques:原子燃料研究製造会社)で製作されたものを使用し、全炉心の燃料を円筒燃料とした。
4.運転状況
 共同利用運転は1963年10月から1964年末まで5MW、130時間/サイクルで行った。1964年12月に10MW試験運転を行った後、1965年2月から10MW、130時間/サイクルの共同利用運転を行ったが、その後運転時間を逐次延長して10MW、265時間/サイクルで年間12サイクルを標準として共同利用運転を行ってきた。この間水平実験孔に設置された中性子回折ビーム実験設備は国内ビーム実験の先駆けとなり、多くの研究者を育成し、今日のJRR-3でのビーム実験の基礎を作りあげた。またアルミニウム製の照射キャプセルを用いた照射実験設備は、円筒燃料内のインコア照射設備とともに、燃料・材料の照射に利用された。
 さらに、内外からの要請を受けて熱中性子柱(サーマルコラム)を改造して1990年8月から脳腫瘍医療照射を開始し、33名の照射を行った。1994年には265時間連続運転を1サイクルとする運転を終了し、50時間連続運転を1サイクルとする運転に変更し、大学院学生のビーム実験や短時間照射の実験等にも使用された。その後、JRR-3Mへの実験等の移行、JRR−4の改造計画の進捗による医療照射の見通しが得られるなど、JRR-2の使命は達成されたことから1996年12月19日に原子炉の運転を永久停止した。総運転時間は約8万時間に達している。
5.利用の成果
 JRR-2は我が国の原子力開発黎明期に建設され、原子炉の建設・運転を通して多くの原子力技術者の育成に貢献してきた。更に原子炉を利用した実験、研究の面でも多くの成果をあげている。
 原子炉内に試料等を挿入して利用する照射利用では、2800個を超えるキャプセルの照射が行われ、放射化分析、原子炉材料・燃料の照射、医療用・工業用のRI製造等広範囲にわたっている。(1)放射化分析では、大学と共同で行う「原研(現日本原子力研究開発機構)施設利用共同研究」による成果がほとんどを占めており、全国の大学研究者に利用されることもあって、研究内容は、生物に蓄積される重金属の分析や隕石中の微量元素定量等、多岐にわたっている。(2)原子炉材料・燃料の照射では、高温工学試験研究炉(HTTR)の原子炉圧力容器鋼材の開発、高速炉用燃料被覆管の照射特性データの取得、核融合炉用トリチウム増殖材の照射とトリチウムの回収実験、HTTR燃料や高速炉用のプルトニウムを含んだ炭化燃料の我が国初の照射等、その後JMTRが主となったが、先駆的な照射を行っている。(3)RIの製造では、189Auなど輸入の困難な短寿命核種の製造、高品質を要求される医療用の192Ir、工業用の60Co、132I等の製造に利用されて来た。最近はガン治療用の198Auや骨粗しょう治療の153Gdや、ライフサイエンス用の3Hや32P等への要求が高まり、これらの供給にも対応してきた。この他、シリコンの単結晶を照射し核反応によって燐を分布させた状態を作って、N型シリコン半導体のインゴットを造る「シリコン中性子照射ドーピング」は、最大では年間約1トンのシリコンを照射し、半導体メーカに供給した実績がある。
 原子炉内の中性子を専用の閉ループを使って照射したり、実験孔等から炉外に導き出して利用する実験利用では、インパイルループ照射設備、中性子回折設備、医療用照射設備が設置された。(1)インパイルループ照射設備では、日本で最初の水ループが取りつけられ、軽水炉燃料の燃料照射が行われた。その後低温照射ループでは、液体窒素温度の低温による照射特性、ガスループによる高温ガス炉燃料の照射、ナトリウムループによる高速炉用のナトリウム中でのFP挙動の解析やFFDの特性試験等、燃料照射の研究に大きな成果をおさめ、燃料照射技術の基礎確立に貢献した。(2)中性子回折実験設備では、当初二軸型中性子回折装置を利用した実験からスタートし、その後三軸型中性子分光器が設置され、非弾性散乱実験が盛んに行われるようになった。これらの研究は、JRR−2とともに始まり、東大物性研の装置も取りつけられるなど、今日のJRR-3における中性子ビーム実験の発展の基礎は、JRR-2において作られたといえる。(3)医療照射では、1989年、国内で照射実績をもつMITR(武蔵工業大学炉)が故障で停止したことにより、JRR-2に急遽医療照射設備を設けることとし、1990年8月から実施した。国内外の30名を超える患者に照射が行なわれ、いずれも照射後の患者の状態は良好との報告を受けている。ここでの成果は、新たに整備されたJRR-4の医療照射設備に活かされている。
6.廃止措置計画
 JRR-2はその目的を達成したことから、1997年5月9日に原子炉等規制法第38条第1項の規定に基づき原子炉施設の解体届を科学技術庁(現文部科学省)に提出した後、1997年8月から解体工事に着手し、1998年3月末に第1段階の解体工事を、2000年2月末に第2段階の解体工事を、また、2006年2月に第3段階の解体工事を終了した。これにより原子炉本体の密閉措置及び原子炉冷却系統施設の機器類撤去工事等を終了し、原子炉本体、原子炉格納施設、放射線管理施設及び放射性廃棄物の廃棄施設以外の解体撤去対象施設の撤去工事がすべて完了した。
 第3段階の解体工事終了後、引き続き第4段階の解体工事(原子炉本体の撤去等、2004年〜2008年)を実施する計画であったが、第4段階で発生する放射性廃棄物量の低減化を図るため、第4段階開始までの間、第3段階の解体工事終了の状態で残存する施設を維持管理する期間を設けることとし、このため解体届の変更届を2004年3月31日、文部科学省に提出した。
 これにより2004年4月から現在に至るまでは、原子炉施設保安規定等に基づき、原子炉本体の安全貯蔵及び残存する原子炉施設の維持管理を行っている。また、省令改正に伴い、原子炉施設の廃止措置計画(認可事項、解体中の原子炉施設も含む。)の提出が義務づけられたことから「JRR-2の廃止措置計画書」を2006年5月12日に、文部科学省に提出した。なお、本計画では第4段階の解体工事として原子炉本体及び建家の解体を行い、さら地にして解体工事を終了することとしており、その工事の開始時期としては、RI・研究所等廃棄物に係る埋設処分場での廃棄物の受け入れ開始後としている。表2に廃止措置工事計画の概要を示す。
<図/表>
表1 JRR-2諸元
表2 JRR-2廃止措置工程表
図1 JRR-2原子炉建屋概略
図2 JRR-2原子炉水平断面

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
JRR-3(JRR-3M) (03-04-02-02)
JRR-4 (03-04-02-03)
JMTR (03-04-02-04)
放射化分析 (09-04-03-20)
日本原子力研究開発機構 (13-02-01-35)

<参考文献>
(1) 日本原子力研究所:JRR-2の概要と安全対策、JAERI6003 (1961)
(2) 日本原子力研究所:JRR-2の運転と利用の成果、JAERI-Tech、94-014(1994)
(3) 日本原子力研究所東海研究所研究炉部:JRR-2の運転経験と利用の成果(1997)
(4) 日本原子力研究所研究炉管理部:研究炉33年のあゆみ、(1990年)
(5) 日本原子力研究所東海研究所研究炉部:研究炉−現状と役割−、研究炉部パンフレット(1995)
(6) 中野正弘、他:JRR-2の解体(1)、JAERI-Tech、2003-072(2003)
(7) 鈴木武、他:JRR-2の解体(2)、JAERI-Tech、2005-018(2005)
RIST RISTトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ