<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 研究炉等
<小項目> 研究炉の概要
<タイトル>
研究炉の概要 (03-04-01-01)

<概要>
 研究炉(research reactor)は、理工学研究、材料照射、RI生産、医療用照射など利用目的に応じた中性子を発生させるように設計された原子炉である。研究炉では、高温高圧の蒸気を発生させて利用する発電炉とは異なり、熱エネルギーは捨てられる。中性子ビーム炉(beam reactor)には多くの水平実験孔設備および中性子導管が設置されており、中性子散乱装置などの実験利用設備が取り付けられている。材料試験炉(Materials Testing Reactor)は多く垂直照射孔を持っており、照射孔にはキャプセル照射設備、水力ラビット照射設備などの照射設備が設置されている。
<更新年月>
2005年10月   

<本文>
1.研究炉の特徴
 研究炉(research reactor)は、図1に示すように、炉心の核反応によって中性子を多く発生させ、理工学研究、医療研究など利用目的に応じたビーム実験ができる実験孔設備を有する原子炉(狭義の意味の研究炉)、あるいは原子炉材料などの材料照射試験設備およびラジオアイソトープ生産ができる照射設備を有する原子炉(試験炉)である。研究炉は発電炉と異なり、炉心で発生した熱は冷却系統を通して捨てられる。炉心は利用中性子を多くするため小型高出力密度であり、発電炉よりウラン濃縮度の高い燃料(ウラン235濃縮度20%)を使用しているが、熱出力は発電炉に比べて低い(多くは100MW以下)。かつてはウラン235濃縮度90%ぐらいまでの燃料が使用できたが、米国からの強い要請により一部の研究炉を除いて低濃縮化(ウラン235濃縮度20%以下)燃料に替えられつつある。
 多くの研究炉の核燃料はウラン・シリサイド−アルミニウム(U3Si2−Al)あるいはウラン・アルミナイド−アルミニウム(UAlx−Al)の合金板状燃料である。この合金板状型燃料はMTR型燃料と呼ばれている。原子炉冷却材は低温・低圧であり、原子炉内構成材は中性子吸収の小さいアルミニウム合金が多く使われる。多くのビーム実験設備および材料照射設備は共同利用施設として供用されている。研究炉の運転はサイクル運転(11サイクル:1週間〜4週間)が普通である。なお、ここでは開発中の原子炉などの炉物理特性を研究するゼロ出力の臨界実験装置、開発中の原子炉の原子炉運転特性把握および材料試験をするための実験炉、高速実験炉「常陽」、高温工学試験研究炉HTTR、の類についてはここでは触れないこととする。
 発電炉は、炉心で得られた熱エネルギーを利用して高温高圧の蒸気を発生させ、この蒸気でタービンを回転させ発電する原子炉である。経済性にも配慮するので大型で熱出力も高い(最近の軽水冷却型発電所では3000MW以上)。核燃料には二酸化ウラン低濃縮(ウラン235濃縮度2〜5%)が用いられている。炉内構成材は中性子吸収が小さく高温水中の耐食性が高いジルコニウム合金(燃料集合体で)やオーステナイト系ステンレス鋼(炉心槽、配管など)が多く用いられている。
2.研究炉の分類
2.1 利用目的で分類
(1)ビーム炉(Beam Reactor)
 炉心で発生した中性子を原子炉反射体(ビーム炉では重水が多い)を貫通する水平実験孔(beam hole)に導き原子炉外に取り出して利用する設備を持つ研究炉のことである。このような水平実験孔を多く持っている研究炉を中性子ビーム利用者間ではビーム炉と呼んでいる。ビーム炉を研究炉(狭義の意味で)と呼ぶこともある。日本で代表的なビーム炉はJRR(Japan Research Reactor)−3M(Modified)(20MW)である(表1図2参照)。京都大炉(KUR)(5MW)もビーム炉である(表2図3参照)。ビーム炉でも材料照射用の垂直照射孔を設置していることは普通である。
(2)材料試験炉(Materials Testing Reactor,MTRと略称)
 炉心および原子炉反射体中に設けられている垂直照射孔を利用して、原子炉材料、核融合炉用材料などをいろいろな条件下で照射できるキャプセル照射設備、水力ラビット照射設備、核燃料を照射するBOCA(沸騰水キャプセル)照射設備などを有している研究炉である。ラジオアイソトープも生産する。材料試験炉は短時間で照射できるよう高中性子束を得るため高出力(50MW〜100MW)であるので、スィミングプール・タンク型(後述)を採用している。また各種照射後試験が行えるホットラボ施設を併設している。日本で代表的な材料試験炉はJMTR(Japan Materials Testing Reactor)(50MW)である(表3図4参照)。
(3)ラジオアイソトープ生産炉
 とくにラジオアイソトープ(放射性同位元素:Radioisotope,RIと略称;英語ではRadionuclide)生産専用の研究炉はほとんど無く、殆どの研究炉(材料試験炉、ビーム炉、教育訓練炉)でラジオアイソトープを生産している。
(4)教育訓練炉
固体均質(水素化・ウランージルコニウム:U−ZrH)燃料を用いているTRIGA(Training,Research,Isotope production, General Atomics)炉は固有安全性が高く小型で運転しやすいので、最初から教育訓練・アイソトープ生産用として設計され、同型炉としては世界で最も多く設置されている。JRR−4は比較的低出力(3.5MW)のスィミングプール・オープン型研究炉なので、原子炉研修生の原子炉運転実習用にも利用されている。
2.2 設計上の分類
(1)スィミングプール型研究炉
 中性子減速材、原子炉冷却材、原子炉反射体および放射線遮へい材としてのプール水(軽水)の底部に炉心が設置されている研究炉がスィミングプール(swimming pool)型である。炉心部が水中を通して直接見ることができ、また炉心周辺が広いので作業性がよい。スィミングプール・オープン型と呼ばれることもある。JRR−4(3.5MW)はこの型の典型的な炉である(表4図5参照)。燃料はMTR型でU3Si2−Al(シリサイド)、UAlx−Al(アルミナイド)の合金板状燃料要素が典型的である。U−ZrH合金燃料(棒状)のTRIGA炉もこの炉型に属する。JRR−3M、JRR−4、NSRR(TRIGA−ACPR型;300kW、パルス運転時最高23000MW)はスィミングプール・オープン型研究炉に分類される。
(2)タンク型研究炉
 材料試験炉(JMTR)のような高出力炉では、原子炉冷却材の沸騰を抑えるため炉心をタンク(炉容器)中に収納している(図6参照)。この型をスィミングプール・タンク型あるいは単にタンク型と呼んでいる。原子炉反射体としては、軽水、重水、ベリリウム、アルミニウム、グラファイト(黒鉛)などが利用されるが、JMTRではベリリウムとアルミニウムが用いられている。
3.研究炉における実験利用設備
(1)中性子ビーム実験設備
 ビーム炉では、原子炉反射体から生体遮蔽にかけて貫通している水平実験孔が設けられ、原子炉外へ中性子ビームとして取り出される。JRR−3Mの水平実験孔は炉心に対し接線方向に配置されており、旧来の炉心直視方向配置より質の良い(高速中性子γ線が少ない)中性子ビームが得られる。水平実験孔には、中性子回折装置、中性子分光器などの高性能のビーム実験利用設備が取付けられる。中性子ラジオグラフィ専用として口径が大きい水平実験孔もある。JRR−4と京都大炉(KUR)には脳腫瘍治療(BNCT)など医療照射ができる中性子ビーム実験設備がある。
 原子炉室から実験利用棟まで中性子ビームを導く中性子導管(内表面をニッケルコーティングしたガラス管内を全反射原理により遠方まで運ぶ)によって、実験に有害な高速中性子やγ線が少ない良質の中性子ビームが得られるので、精度の高い中性子散乱実験ができる。熱中性子導管(thermal neutron guides)2本と冷中性子導管(cold neutron guides)3本がJRR−3Mに設置されている(図7参照)。冷中性子源装置(Cold Neutron Source)では、原子炉外のヘリウム冷凍装置によって冷却された液体水素(原子炉反射体の中)を通すことにより熱中性子ビームから冷中性子ビームが作られ、冷中性子導管に送られる。冷中性子(エネルギーで5meV以下、波長で4オングストローム以上の中性子)ビームは中性子散乱実験に利用されるが、生体高分子の構造研究にとくに有用である。冷中性子源装置は京都大炉にも設置されている。
(2)照射利用設備
 材料試験専用炉であるJMTRには、中性子束の高い炉心および原子炉反射体に上下貫通する垂直照射孔が設けられている。その照射孔には原子炉材料、核融合炉材料などの材料照射試験およびラジオアイソトープ生産のために、さまざまな環境条件の下に照射ができるキャプセル照射設備および水力ラビット照射設備、発電炉の原子炉冷却材条件(圧力、温度)の下で線出力急変させ核燃料の照射試験ができるBOCA(沸騰水キャプセル)照射設備が設けられている。ホットラボ施設はJMTRとはカナルで接続されており、この施設で、照射済み試料に対して金相試験や破壊強度試験等の照射後試験ができる。JRR−3Mにも放射化分析用照射設備、気送照射設備、水力照射設備、垂直照射設備および均一照射設備があり、均一照射設備ではシリコン半導体の製造が行われている。NSRRでは、反応度事故を模擬したパルス運転ができ、反応度事故時の原子炉燃料のふるまいを究明できるよう炉心中央に上下に貫通する直径約20cmの垂直実験孔をもっている。
<図/表>
表1 JRR−3M諸元
表2 KUR設計諸元
表3 JMTRの主要特性
表4 JRR−4の諸元(改造後)
図1 研究炉・試験炉の役割
図2 JRR−3M原子炉プール鳥かん図
図3 KURの水平断面図
図4 JMTRの炉心配置図
図5 JRR−4原子炉本体の概要
図6 JMTRの炉容器構造
図7 JRR−3M中性子ビーム実験装置

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
研究炉燃料低濃縮化計画(REPTR) (03-04-01-04)
研究炉のあり方検討報告 (03-04-01-05)
JRR-3(JRR-3M) (03-04-02-02)
JRR-4 (03-04-02-03)
原子炉安全性研究炉(NSRR) (03-04-02-05)
試験研究炉用ウラン燃料 (04-06-01-04)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:研究施設の利用、2002年
(2)日本原子力研究所大洗研究所材料試験炉部:”JMTR照射ハンドブック”JAERI−M 94−023(1994)
(3)日本原子力研究所東海研究所研究炉部:研究炉利用ハンドブック(1993年3月)p.45
(4)日本原子力研究所東海研究所研究炉部:研究炉−現状と役割−、研究炉部パンフレット(1997年7月)p.6,p.14
(5)日本原子力研究所:平成10年度成果報告会(スライド集)p.18
(6)日本原子力研究所:研究施設の利用、http://kikaku.tokai.jaeri.go.jp/ken−kyou/sisetu−syoukai/JMTR.html
(7)日本原子力研究所大洗研究所:JMTRパンフレット(2003)p.9
(8)日本原子力研究所:研究炉利用ホームページ、http://rrsys.tokai.jaeri.go.jp/riyou−setsubi/index03.html
RIST RISTトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ