<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高温ガス炉
<小項目> 高温ガス炉を用いた核熱利用
<タイトル>
高温ガス炉の利用の仕方 (03-03-05-03)

<概要>
高温ガス炉から高温の熱(1,000℃程度のヘリウムガス)が取り出せると、それを単に 発電だけでなく、他の多くの分野にも利用できるようになる。
・例えば、製鉄業における鉄鋼石還元のための還元ガスの製造や加熱、石炭のガス化・液化、化学工業の原料や自動車、航空機、ロケット、燃料電池などの燃料となる水素の製造に利用できるようになる。
<更新年月>
2003年09月   

<本文>
 高温ガス炉システムにおける核熱利用の形態を図1に示す。
(1)原子炉出口温度が1,000℃程度の高温ガス炉システムが開発されると、900℃程度の高温ヘリウムガスが供給できる系と、 500℃程度の高温蒸気が供給できる系の二つの熱供給系が成り立つものと考えられる。その場合、高温ヘリウムガスはその熱エネルギーを燃料製造などに直接利用される。すなわち、還元ガスの製造、石炭のガス化・液化、水素製造など産業用の熱源として利用される。また、高温蒸気はこれらの産業が必要とする電力を賄うため蒸気タービン発電に利用される。こうして原料、燃料、及び電力が供給されるが、さらに工場などが原子炉に隣接して立地可能であれば、高温のヘリウムガス及び蒸気が直接に工場などへ供給され利用できる。
(2)原子炉からの高温熱エネルギーを利用して、原料のアスファルトから還元ガスを製造し、これを高温に加熱してシャフト炉に送り込み、鉄鉱石を還元して固体の還元鉄を製造することができる(原子力製鉄)。この方法が導入されると、現在の高炉製鉄法に伴う原料炭依存からの脱却、大量かつ多様のエネルギー消費の低減、また化石燃料消費による公害問題の解決に役立つ。このため、「高温還元ガス利用による直接製鉄技術の研究開発」の名のもとに、原子力製鉄の研究開発が通産省工業技術院(現(独)産業技術総合研究所)の大型プロジェクトの一つとして昭和48年から実施され、原子炉に接続する直接製鉄パイロットプラントの実現に必要な要素技術を確立し、昭和55年に終了している。
(3)原子炉からの高温熱エネルギーを利用して、石炭をガス化して合成天然ガス、液化して液化油やメタノールなどを生産することができる。石炭は固体燃料のため貯蔵、輸送、取り扱いが不便で、しかも大量消費に伴うばいじん、硫黄酸化物、窒素酸化物等の環境排出物を抑えながら利用するには、ガス化、液化して利用する方法がある。石炭資源の豊富な西独では、早くから石炭活用の必要性を認識して、石炭と褐炭のガス化・液化を主目的とする高温ガス炉の開発に始まるPNP計画を進めている。わが国では、昭和48年の石油危機を契機に、通産省工業技術院(当時)がサンシャイン計画の「新エネルギー技術開発」のもとで技術開発が進められた。
(4)原子炉からの高温熱エネルギーを利用して、水から水素を製造することができる。これには、化学反応に必要な熱エネルギーを高温ガス炉から供給し、いくつかの化学反応を組み合わせて水を水素と酸素に分解する熱化学法が有望である。水素は現在でも化学工業の重要な原料の一つでもあるが、本来燃料としても極めて優れた性質をもっている。また、
  a.原料が水で無限にある、
  b.燃料として使用すると再び水に戻り有害物質を発生しないのでクリーンである、
  c.貯蔵が容易である、
  d.家庭用から工業用、宇宙用さらには自動車や飛行機などの燃料にも使用できる、
 などの特長を有する。現在、わが国を含めて世界的に研究が進められているが、イスプラ研究所のマーク13法、ゼネラル・アトミックスのSO2ハイブリッド法、東京大学 のUT−3法、日本原子力研究所(原研(現日本原子力研究開発機構))のIS法などが有名である。原研(現日本原子力研究開発機構)では、高温工学試験研究炉による水素製造を目指して炉外試験が進められている。
(5)原子炉からの高温ヘリウムガスを直接ガスタービンに導き(閉サイクル)発電を行うと、現在の蒸気タービン発電より高い40%以上の熱効率を得ることができる。西独では、ガスタービン発電を目的としたHHT計画(現在休止)をスイスとの協力のもとで進め、機器要素の実証試験設備を開発するなどの成果を得ている。なお、ガスタービン使用後のヘリウムガスはまだ 500℃程度の高温を保っているので、これを蒸気タービンと組み合わせるとさらに50%以上の熱効率が得られることになる。
(6)以上のように、高温ガス炉は発電以外にも高温の熱エネルギーを産業用熱源として利用できるのが特長である。また、このように高温熱源として利用した後の熱媒体はまだ温度が高くて利用可能なので、これを例えば蒸気タービン発電や一般工業、地域暖房、海水淡水化などに利用し、さらに下がったところで農業、漁業などに利用するなど、段階的に利用すると熱の利用効率が飛躍的に高められ、省資源、省エネルギーに役立つばかりでなく、エネルギー多消費産業からの環境汚染物質の放出量を低減できる。
<図/表>
図1 高温ガス炉システムにおける核熱利用の形態

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<関連タイトル>
高温ガス炉による核熱エネルギー利用の拡大 (03-03-05-01)
高温ガス炉による核熱エネルギー利用の範囲と拡がり (03-03-05-02)
高温ガス炉の利用によるコージェネレーション (03-03-05-04)
HTTRを用いた熱化学法ISプロセスによる水素製造研究開発計画 (03-03-05-05)

<参考文献>
(1)村田浩ほか7名;エネルギーレビュー,核熱利用の旗手・高温ガス炉,第2巻・第8号 (1982年),2−30
(2)原子力製鉄技術研究組合:核熱利用システムの調査報告書(2)(1981)
(3)高温工学試験研究炉開発部他(編):高温工学試験研究の現状1998年、日本原子力研究所(1998年)
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