<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高温ガス炉
<小項目> 高温ガス炉の概要
<タイトル>
ガス冷却型原子炉の技術的進展 (03-03-01-01)

<概要>
 黒鉛減速ガス冷却炉は、発電炉としては、炭酸ガス冷却型のマグノックス型炉と改良型のAGR、ヘリウム冷却型の高温ガス炉(HTGR)が実用化している。近年は、850℃以上の1次冷却材を用いた高効率ガスタービン発電用高温ガス炉の技術開発が進んでいる。また、HTGRを発電以外の用途に用いるための技術開発も進展し、日本原子力研究開発機構においては、950℃の高温ガス炉の取り出せる高温ガス炉技術の開発に加えて、熱化学法ISプロセスによる水から水素の製造技術開発も進められている。諸外国においても、高温ガス炉に対する関心が高まり、950℃以上の高温の出口温度を目指す超高温ガス炉(VHTR)がGIF(第4世代原子炉システム国際フォーラム)における候補炉型の一つとして取り上げられて、必要な要素技術開発が進められている。
<更新年月>
2006年09月   

<本文>
1.はじめに
 ウラン核分裂がドイツのオットーハーンとシュトラスマンにより1938年に発見されてから、アメリカにおいて最初に原子炉が完成したのは1942年である。この原子炉は、シカゴパイル−1(CP-1)と呼ばれ、黒鉛減速空気冷却炉であった。このように原子炉開発の黎明は、黒鉛減速ガス冷却炉によってもたらされた。今日、一般に、ガス冷却型炉とは、黒鉛を減速材とし、炭酸ガスまたはヘリウムを冷却材として用いるものをいう。
 炭酸ガス冷却型炉には、最初に実用化された発電用マグノックス型炉(GCR)、それを改良した改良型ガス炉(AGR)がある。またヘリウム冷却型炉を高温ガス炉(HTGR)という。ガス冷却型原子炉は、これまでに発電用として実用化され、マグノックス型炉37基,AGR15基、HTGR原型炉・実験炉7基を合わせると、総計59基が建設されている(2005年末現在)。現在運転中のGCR、AGRの発電容量は全世界の原子力発電容量の3.0%(11.5GWe)である(2005年末現在)。ガス冷却型炉は、軽水炉や高速炉と比較して炉心および熱交換器において伝熱特性が劣るものの、高温化による熱効率の向上が可能となり、エネルギー生産技術の高度化という長期的視野において、今後とも原子力開発利用において一定の役割を担うものと考えられている。上記3形式の原子炉に加え、最近では、高温ガス炉よりもさらに高温の熱の供給を目指す次世代炉として超高温ガス炉(VHTR)の開発も開始されている。これら4形式の原子炉の代表的な発電炉の主要目を表1に示す。以下、各々のガス冷却型原子炉について、技術的進歩の過程を簡単に述べる。
2.マグノックス型炉(2005年末現在)
 マグノックス型炉の第1号炉はイギリスのウインズケール炉で1956年に商用運転を開始した。天然ウラン金属をマグノックス(マグネシウム合金)で被覆した燃料棒を用い、炭酸ガス冷却材の温度を約400℃に抑えている。このため出力密度は40〜50kW/m3である。1960年代に主としてイギリスで多数の発電所が建設され、出力密度および冷却材圧力等の向上が図られている。マグノックス型炉の最新型炉であるウィルファ炉(Wylfa-1/2)は電気出力565MWeで熱効率31.5%を達成している。この炉ではプレストレスコンクリート圧力容器(PCRV)の中に蒸気発生器、ガス循環機等の主要機器が炉心と共に一体型に収容されている。マグノックス型炉はイギリスで26基、フランスで8基、イタリア、日本およびスペインで各1基である。既に、イギリスでは、初期のバークレー発電炉(Berkeley-1/2)を含め18基が運転を停止している。一方、マグノックス型炉の寿命延長の研究開発が進行中である。
3.改良型ガス炉(AGR)(2005年末現在)
 AGRは、マグノックス型炉の経済性を向上させるためにイギリスが独自に開発した黒鉛減速炭酸ガス冷却炉である。燃料には低濃縮ウラン酸化物(UO2)を用い、ステンレススチールを被覆管に用いているため、出力密度約200kW/m3を達成すると共に、冷却材温度を650℃程度まで上昇させ、過熱/再熱蒸気サイクルにより熱効率40%以上での発電を可能としている。AGRは単基660MWe、PCRV型に標準化され、一発電所当たり2基ずつ建設されている。最初のAGR(Hinkley Point-B)が1976年6月に営業運転開始して以来、7発電所、合計14基が建設され、稼働中である。その総発電容量は約8800MWeであり、イギリスの原子力発電の大半を占めている。
4.高温ガス炉
 高温ガス炉(HTGRまたはHTR)の開発が1950年代後半から精力的に進められてきている。原子炉冷却材温度を700℃以上にするため、冷却材にヘリウムを用いるとともに、炉心構成材料には金属材料を一切使用せず、出力密度を3〜6MW/m3程度まで高めているのがこの原子炉の特徴である。
 すなわち、燃料要素の基本設計は、セラミックス微小燃料粒子を熱分解炭素(PyC)や炭化珪素(SiC)で多重に被覆し(被覆燃料粒子という)核分裂生成物を直径1mm以下の粒子内に閉じ込めるものである。減速材の黒鉛材料は1000℃以上の高温で照射されるため、その健全性を維持するため一定の運転期間ごとに交換するようになっている。
 高温ガス炉開発に関して先行した欧米では、これまでに3基の実験炉と2基の発電用原型炉が建設、運転されてきた。実験炉はDragon炉(OECD、20MWt、1964〜1976年)、AVR(ドイツ、13MWe、1966〜1988年)およびPeach Bottom-1炉(アメリカ、40MWe、1966〜1974年)である。原型炉は、Fort St. Vrain炉(アメリカ、330MWe)とTHTR(ドイツ、300MWe)でそれぞれ1981年と1986年に営業運転を始めたが、いずれも、いわゆる初期故障や政治・経済的な理由により既に運転終了している。
 1970年代前半に高温ガス炉型原子力発電所の多くの建設がアメリカで発注されたが、石油ショックにより他の原子力発電所建設計画と同様に消滅した。前述の在来HTGRは全て高濃縮ウラン、トリウムの混合燃料を用いているが、燃料要素の形式としては、ドイツの球状(ペブルベッド型)燃料とアメリカのブロック型燃料の二つが実用化されている。球状燃料は運転時連続燃料交換、ブロック型燃料は炉停止時に部分燃料交換を行うものである。また、原型炉はPCRVを採用してきたが、実用炉の設計では鋼製圧力容器を用いるモジュール型炉が主流となっている。原型炉の冷却材温度は750℃以上あり、熱効率約40%の発電が達成されている。発電用原型炉の成果は第1号炉で経験される諸トラブルなどにより必ずしも良好ではなかったが、被覆燃料粒子、黒鉛材料のみで構成されヘリウムを冷却材とする高温ガス炉の炉心の性能が実証されている。
 発電用HTGRの次のステップとして900℃〜1000℃のヘリウムガスを発電以外の用途に用いるための研究開発は、主としてドイツ、日本、ロシア(ソ連)で進められてきている。ドイツでは、1975年に石炭ガス化/メタン改質プラント(PNP-500)の大規模な研究開発が開始され、燃料、耐熱材料、炉工学、高温機器、安全性等の技術開発の成果が得られたが、1990年代に財政的な理由等により終了している。ロシアでは、アンモニア製造や熱電併給(コジェネレーション)を目的としたHTGRの設計および技術開発が1980年代初めより続けられ、球状燃料炉心を採用しているためドイツと密接な協力を進めていた。しかし、最近では、ブロック型のガスタービン発電炉GT-MHRを米国と共同で開発しているところである。わが国では、1979年に旧日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)が多目的高温ガス炉研究開発計画をスタートし、通産省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)の原子力製鉄研究と呼応し、高温ガス炉技術の開発を進めてきている。その成果を集約し、高温工学試験研究炉(HTTR,熱出力30MWt,冷却材最高温度950℃)の建設に1991年3月から着手し、1998年11月に初臨界、2001年12月に定格出力到達、2004年4月には原子炉出口冷却材温度950℃を達成と順調に運転を続けており、現在は安全性実証試験等を実施中である。
 また中国では、重油回収や石油化学工業用の熱源として高温ガス炉利用の検討がドイツの協力の下に進められてきた。このような電力・プロセス蒸気供給炉として、また、分散型電源として、更に石炭ガス化等高温核熱利用の熱源として高温ガス炉開発を進めるため、清華大学において、ペブルベッド炉心をもつ実験炉HTR-10(10MWt、原子炉出口冷却材温度、最高900℃)が建設され、2000年12月に初臨界、2003年1月に定格熱出力1万kW、電気出力2500kWおよび原子炉出口ガス温度700℃を達成した。
 高温ガス炉は、中小型発電炉および高い固有安全性を備えた炉(第4世代に代表される次世代炉)として、その開発には世界的な関心が寄せられてきた。すなわち、諸外国においては、1980年代はじめ以後500MWe(相当)以下の中小型炉としての導入が真剣に検討され、併せて、高度の固有安全性を有するプラント設計概念が考案されてきている。具体的に予備的な安全審査まで到っているものとして、ドイツのHTR-500 、HTR-M、アメリカのMHTGRが挙げられる。これらは蒸気タービン発電用商用炉であり、両国の在来HTGR炉での実証技術をベースとし、経済性、安全性、信頼性を重視した設計と言われている。これらの技術を背景に、ドイツのHTR-Mは南アフリカのPBMRおよび中国のHTR-10(10MWt、ペブルベッド型試験炉)に、アメリカのMHTGRはGT-MHR計画および日本のHTTR計画に引継がれているといえる。
5.超高温ガス炉(VHTR)
 ここ数年、来るべき水素社会の実現の観点から、原子力を用いた水素製造への関心が世界的に高まってきているが、高効率に水素を製造するためには、950℃もしくはそれ以上の熱が必要なことから、従来の高温ガス炉技術を踏まえた次世代炉としての超高温ガス炉(VHTR)の開発が必要というのが国際的な共通認識となりつつある。そして、VHTRがGIF(第4世代原子炉システム国際フォーラム)における候補炉型の一つとして取り上げられて開発が進められようとしている。また、米国ではガスタービン発電と水素製造を行うHTGRコジェネプラントを次世代型原子力プラント(NGNP)として開発を進める動きも開始されている。高温ガス炉およびVHTRに係わる最近の開発動向の詳細については、別項の関連タイトルを参照されたい。
(前回更新:2001年9月)
<図/表>
表1 各種ガス冷却型発電用原子炉の主要目


<関連タイトル>
改良型ガス冷却炉(AGR) (02-01-01-07)
高温ガス炉概念の特徴 (03-03-01-02)
高温ガス炉と軽水炉の相違 (03-03-01-03)
高温ガス炉の発電炉としての適合性と将来性 (03-03-04-02)
高温ガス炉による核熱エネルギー利用の拡大 (03-03-05-01)
日本における高温ガス炉技術の開発と国際協力 (03-03-06-01)

<参考文献>
(1)IAEA:STI/DOC/10/312(1990)
(2)日本機械学会(編):機械工学便覧B応用編、Cエンジニアリング編、日本機械学会(1989年)
(3)IAEA:Current status and future development of modular high temperature gas cooled reactor technology,IAEA-TECDOC-1198(February 2001)
(4)塩沢周作、日野竜太郎:原子力水素生産への期待・展望、原子力eye、Vol.51、No.11、24-25(2005)
(5)伊勢武治、早川均:海外諸国における新型中小型炉の開発現状、FAPIG 第120号、2-11(1988)
(6)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、2005年次報告(2005年12月)
(7)O. M. Stansfield:Evolution of HTGR Coated Particle Fuel Design,Energy,16(1/2),33-45(1991)
(8)H.Fujikawa,H.Hayashi,T.Nakazawa,et al.:“Achievement of Reactor Outlet Coolant Temperature of 950℃ in HTTR”,J. Nucl. Sci. Technol.,41(12),1245(2004)
(9)S.Hu,et al.:Safety demonstration tests on HTR-10,Proceedings of the 2nd International topical Meeting on High Temperature Reactor Technology,Beijing,China,September 22-24,Paper H06(2004)
(10)U.S.DOE:“A Technology Roadmap for Generation IV Nuclear Energy Systems”,GIF-002-00(2002)
(11)INEEL:“Next Generation Nuclear Plant Research and Development Program Plan”,INEEL/EXT-05-02581(January 2005)
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