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<概要>
 計画されたものを含め世界各国で開発されている10基の高速増殖炉原型炉に関する主要な情報を、比較し易いように表形式にまとめた。PFR、BN−350は運転を停止し、さらにSNR−300、CRBR、およびPRISMの計画は中止された。原型炉の型式はタンク型(プール型とも呼ぶ)とループ型がほぼ半数である。燃焼度の目標値は高く、PFRでは最大25万MWd/tであり、既に15万MWd/tを達成している。冷却材のナトリウムの温度は、最高560℃、蒸気条件は軽水炉よりも高温・高圧である。
<更新年月>
2004年11月   

<本文>
 世界各国で計画されているものも含め開発されている高速増殖炉原型炉は、Phenix(フランス)、SNR−300(ドイツ)、PFBR(インド)、もんじゅ(日本)、PFR(イギリス)、CRBR(アメリカ)、BN−350(カザフスタン)、BN−600(ロシア)、PRISM(アメリカ)およびKALIMER−600(韓国)の10基である。現在PhenixとBN−600が順調に運転されており、もんじゅは1995年の二次主冷却系ナトリウム漏洩の後、運転が再開されていない。
 表1に高速増殖炉原型炉を開発している国、出力、燃料や冷却材の種類などを示した。10基のうち運転中のものが前述の2基、計画中または建設中のものが韓国とインドの2基、停止中のものが1基、残りは閉鎖または中止になっている。カザフスタンのカスピ海沿岸にあるBN−350は原型炉としては世界最初のもので,海水脱塩併用である。1994年4月、BN−350の廃止措置が経済的理由により決定した。発電と海水脱塩併用であるロシアのBN−600(電気出力600MW,ベロヤルスク発電所3号機)は1980年2月26日初臨界、1981年12月22日に定格出力に達している。電力・熱併給プラントとして商業運転され、1995年の設備利用率は67.5%であった。インドのPFBRは2003年9月に工事認可がおりた。ドイツのSNR−300、アメリカのCRBRおよびイギリスのPFRは財政的事情などにより中止した。また、アメリカのPRISM計画は概念設計の段階であったが、PRISMを含むALMR(Advanced Liquid Metal Reactor)計画全体が1994年度から政策変更などの理由により中止された。韓国のKALIMER−600(600MWe)は現在概念設計が進められている。
 原型炉の型式はプール型(タンク型とも呼ぶ)とループ型がほぼ半数である。燃料はPRISMのみがウラン・プルトニウム合金の金属燃料で、他はウラン・プルトニウム混合酸化物(PuO2−UO2)燃料である。旧ソ連の2つの炉も最初はウラン酸化物(UO2)燃料であったが、後にPuO2−UO2燃料に変えた。
 濃縮度、核物質量、出力密度、燃焼度および増殖比の数値を表2に示した。CRBRを除いて、炉心は2領域であり、外側の濃縮度を大きくして出力の平坦化を行っている。大きな燃焼度を目標として、イギリスのPFRは最大25万MWd/tを目標とし、既に平均で15万MWd/tを達成している。増殖比は1.1から1.24である。
 表3は冷却系の数値を示す。原子炉の構造材などに用いるステンレス鋼の高温領域の物性値データが少ないことなどで、冷却材のナトリウム温度は560℃以下の温度に設定されているが、軽水炉よりも高い。したがって蒸気条件も軽水炉よりも高温・高圧である。
 主要機器である炉容器、中間熱交換器および蒸気発生器に関するパラメータを表4に、制御棒原子炉格納容器、非常用冷却系および工学的安全設備に関する情報を表5に示した。原子炉格納容器の形状が直方体であるもの、コンクリートを使用したものが半数ある。
<図/表>
表1 世界の高速増殖炉原型炉の一般設計諸元
表1  世界の高速増殖炉原型炉の一般設計諸元
表2 世界の高速増殖炉原型炉の炉心設計諸元
表2  世界の高速増殖炉原型炉の炉心設計諸元
表3 世界の高速増殖炉原型炉の冷却系設計諸元
表3  世界の高速増殖炉原型炉の冷却系設計諸元
表4 世界の高速増殖炉原型炉の主要機器設計諸元
表4  世界の高速増殖炉原型炉の主要機器設計諸元
表5 世界の高速増殖炉原型炉の主な安全設備設計諸元
表5  世界の高速増殖炉原型炉の主な安全設備設計諸元

<関連タイトル>
世界の高速増殖炉実験炉 (03-01-05-01)
世界の高速増殖炉実証炉 (03-01-05-03)
日本における高速増殖炉開発の経緯 (03-01-06-01)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)

<参考文献>
(1)IAEA:LMFBR Plant Parameters 1991,IWFR/80 (1991)
(2)動力炉・核燃料開発事業団:高速増殖原型炉もんじゅ−設計・建設・試運転の軌跡−(1994年7月),p20
(3)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑2003年版(平成2003年10月)
(4)P.Magee et al.:Performance Analysis of the 840MWt PRISM Reference Burner Core,The 3rd JSME/ASME Joint Int’l. Conf.on Nucl. Eng. Apr.(1995)
(5)日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック2003年版(2003年8月)
(6)動力炉・核燃料開発事業団:第30回IAEA/IWGFR定例年会報告(1997年5月、北京)、PNC−TN1410−97−024
(7)Dohee Hahn: Status of the Fast Reactor Technology Development Programme in Korea, IAEA TWG−FR, 37th TWG−FR Annual Meeting, May (2004)
(8)S. C. Chaetal :Status of Fast Reactor Development in India April 2003−March 2004, IAEA TWG−FR, 37th Annual Meeting, May (2004)
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