<大項目> 原子力発電
<中項目> 技術の改良・高度化
<小項目> 軽水炉高度化
<タイトル>
欧州加圧水型炉(EPR) (02-08-03-05)

<概要>
 欧州加圧水型炉(EPR)はフランスのアレバ社が開発した次世代型の加圧水型炉PWR)である。EPRは電気出力1600MWe(160万kWe)の大型PWRで、基本構成および主要機器は在来PWRと同様であるが、経済性と安全性に一層の向上が図られている。とくに過酷事故発生確率の低減と安全確保に重点が置かれ、航空機の衝突と炉心溶融に対処した原子炉格納容器の設計となっている。世界最初に建設される発電所はフィンランドのオルキルオトー3で2005年に着工し2012年に、次がフランスのフラマンビル−3で2007年に着工し2012年に、その後、中国の台山(タイシャン)−1が2009年に着工し2014年に営業運転を開始する予定である。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
1.概要
 欧州加圧水型炉(EPR:European Pressurized Water Reactor)は、フランスのアレバ社(フラマトム社とシーメンス社の合併会社)が開発した第三世代プラスの革新型加圧水型炉(Evolutionary PWR)である。フランスのN4(4基)とドイツのKONVOI(3基)の建設・運転の経験をもとに、欧州共通の新安全基準に合致させるとともに、大型化と簡素化による経済性の向上が図られている。世界最初のEPRはフィンランドのオルキルオトー3で、2005年末に着工し2009年に営業運転開始の予定であったが、初号機でのこともあって品質管理問題などのトラブルで2012年に延期している。次がフランスのフラマンビル−3で2007年中期着工し2012年に営業運転開始の予定である。中国とは2基が契約されており、広東省の台山(タイシャン)−1が2009年秋に着工し2014年に営業運転開始の予定である。米国では4基が建設運転一括認可(COL)申請中である。
2.基本構成と経済性の特徴
 EPRの主要要目を表1に示す。
 EPRは一次冷却系ポンプ4基と蒸気発生器4基からなる4ループであり、また原子炉冷却水中のボロン(中性子吸収材)濃度を変えて燃料燃焼を含むゆっくりした出力変化を制御する方式やバーナブルポイズンにガドリウム(中性子吸収材)を用いて運転初期の反応度出力分布を調整する方式も従来のPWRと同じである。大出力(1600MWe)達成によるMWe当りの建設費節約と経済性向上、鋼製中性子反射体、大型炉心、および高燃焼度(60,000MWd/t)による燃料利用の向上(ウラン資源の節約)、長い運転サイクル(最大24か月)、短い燃料交換期間(16日程度)、長い原子炉寿命(約60年)、運転中でもできる保守点検などにより、設備利用率の大幅な向上(約95%)などが図られている。また50%ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料も使用可能である。定格出力の20%〜100%に対して全自動運転ができ、60%〜100%に対して5%/分の負荷変動が可能である。このような設計から、EPRはガス複合発電より20%低い発電コストを提供できる。
3.安全性の特徴
1)炉心損傷事故(過酷事故)時の格納容器健全性確保
2)安全系統の単純化
3)分離性と多様性の強化による共通要因故障の防止
4)一次冷却系と蒸気発生器の高い保有水による運転操作時間余裕の増大
5)最適化されたマンマシンインターフェイスによるヒューマンエラーの低減
 これらの安全性対策を行った結果、プラント内要因による炉心溶融確率を10−6/炉年以下、原子炉格納容器外放射性物質漏出確率を10−7/炉年以下としている。
 安全系の構成を図1(一次側安全系)と図2(二次側安全系)に示す。重要な安全系とその補助系(安全注入系、非常用給水系、補機冷却系、非常用電源系)は共通要因故障を避けるため完全に分離された4系列構成となっており、また誤操作防止のために機能の複雑な組み合わせを避け単純な作動様式となっている。また、多様性をとくに採用しており、原子炉停止後の余熱除去については、余熱除去系、蒸気発生器給水系、安全注入系のいづれかの系統が全く作動しなくても他系統でカバーする。また一次冷却系が破損した場合には、原子炉格納容器内に設置された燃料取替用水タンクの水を一次冷却系の高温側と低温側に注入し炉心を冷却する。一次冷却系から漏出した水は原子炉格納容器内燃料取替用水タンクに溜まり再循環される。この燃料取替用水タンクの水は、炉心溶融物が原子炉格納容器底部に溜まった場合のデブリ(コリウム)の冷却にも使われる。また、過酷事故時の原子炉格納容器冷却の多様性確保のため格納容器スプレイ系が設けられている。
 非常用給水系は、非常用給水タンクを含め完全4系列である。電動非常用給水ポンプは非常用ディーゼル電源(4基、それぞれ分離配置)に接続されている。安全系の自動起動と制御のための計測制御系も4系統からなり、ディジタル技術による高度の冗長性と信頼性を備えている。運転操作のためヒューマンファクターを重視し、適切なマンマシンインターフェイスを採用し、また事故時の運転員支援のための診断システムを設けている。また、事故後最初の30分間は自動作動だけで対処できる設計となっている。
4.プラント配置
 原子炉系建屋の形状と配置を図3(原子炉系建屋平面図)と図4(原子炉系建屋配置)に示す。原子炉建屋(原子炉格納容器)は中央に配置され、安全系建屋と燃料建屋で囲まれている。安全系建屋は完全に分離された4系列配置であり、機械系は下部に電気計装系は上部に配置されている。安全系建屋のB・GとC・Hは航空機衝突に対し防護されている。余熱除去系は信頼性向上のため原子炉格納容器内に設置されている。
 原子炉格納容器はプレストレストコンクリート製の楕円ドーム円筒形である。この格納容器壁は2重構造となっており、外側壁は鉄筋コンクリート製で外部からの航空機衝突の予防壁となっている。内側壁からの漏洩はアニュラス部で受けとめられてフィルターで濾過後大気へ放出される。原子炉格納容器内には事故後発生した水素の除去と防爆防止のため受動触媒式再結合装置を設けている。原子炉格納容器底部にはコアキャッチャーがあり、過酷事故時には炉心の溶融から出たデブリ(コリウム)が冷却設備のある貯留エリア(170m3)に導かれる。
(前回更新:2003年9月)
<図/表>
表1 EPRの主要要目
図1 EPR1次側安全系
図2 EPR2次側安全系
図3 EPR原子炉系建屋平面図
図4 EPR原子炉系建屋配置

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<関連タイトル>
受動的安全炉の安全概念 (02-08-03-01)
System 80+ (02-08-03-02)
SBWR (02-08-03-03)
AP600及びAP1000 (02-08-03-04)

<参考文献>
(1)AREVA社:EPR The 1600+MWe Reactor、http://www.areva−np.com/common/liblocal/docs/Brochure/EPR−4vol−en−Janv09.pdf (2008年12月)
(2)TVO社:Olkiluoto−3 Basic Facts、http://www.tvo.fi/uploads/File/OL3perustiedot−ENG(1).pdf、 (2008年12月)
(3)F. Bouteille,H.Seidelberger:The European Pressurized Water Reactor−A Status Report,Nuclear Engineering International,October 1997,p14−18
(4)Proceedings of The European Pressurized Water Reactor(Koln Germany 19−21 October 1997 German Nuclear Society,French Nuclear Energy Society)
(5)Watteau.M.P.et al.:The European Pressurized Water Reacter −French− German Advanced PWR Project,Nucl.Power Option,337−350(1994)
(6)Teichel H.:Objectives in Developing in European Pressurized Water Reactor(EPR),Nucl.Eng.Des.165(1/2),271−276(1996)
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