<大項目> 原子力発電
<中項目> 技術の改良・高度化
<小項目> 技術開発
<タイトル>
世界の出力調整運転(試験)の現状 (02-08-01-02)

<概要>
 電力需要は1日周期でも1週間周期でも変動し、需要に合わせた負荷追従運転は経済性向上のために必要な運転モ−ドである。全発電設備の内で、原子力発電の割合が高いフランスでは特にこの要求が高く、研究の段階を経て、1982年から負荷追従運転は商用運転モ−ドに取り入れられている。また米国では、PWR、BWRの両炉型で、負荷追従運転の試験/デモンストレ−ションが行われた。
 出力調整過程で、燃料の健全性にもっとも厳しい影響を与える出力急昇試験がハルデン計画、インタ−ランプ計画、オ−バ−ランプ計画、デモランプ1、2計画、ス−パ−ランプ計画等で行われ、また出力サイクル試験がハルデン計画で行われた。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 米国の一部の電力会社及びヨ−ロッパの一部の国で、発電設備の内で原子力の割合が高い処は経済的な発電を行うために、負荷追従運転が必要になってきた。フランスではその割合が特に高く、試験研究の段階を経て、現在は負荷追従が商用運転に取り入れられている。また、米国では、PWR、BWRの両炉型で、負荷追従運転の試験/デモンストレ−ションが行われたが、商用運転として一般化するまでには至っていない。。
 出力変動の方法は、PWRではホウ素濃度の制御であるが、BWRでは冷却材流量制御のみと冷却材流量と制御棒の両者を制御する場合がある。出力変動に伴う技術的な問題のうちで炉物理、炉工学の問題は文献 (1)に説明されている。また、燃料の健全性に対しては、出力急昇が最も大きな影響を与えるので、負荷追従の実用化に先だって、ハルデン計画を始めとする多くの国際共同研究で(後述)、燃料の健全性に及ぼす出力急昇の影響が調べられた。
 フランスでは全発電量のうちで原子力発電の割合は、1984年で55%、1986年には70%、1990年には75%に達している。このため、電力需要に応じた負荷追従運転が必要になる。
 負荷追従試験は、1979年から一部の原子炉で行われ、1982年6月には負荷追従に、1984年2月には周波数制御、1985年8月には両者を同時に行う運転に認可が出された。出力変動モードとしては、
遅い変動  :12(定格出力)−3(降下)−6(低出力)−3(上昇)(数字は時間)
中程度の変動:出力低下及び上昇速度は共に定格出力の2%/分、
速い変動  :出力低下及び上昇速度は共に定格出力の5%/分、
があるが、EDFフランス電力公社)では、最も厳しい速い変動についても1985年から採用している。
  図1 は、フランスにおける負荷追従と周波数調整運転の回数と燃料破損の関係を示したものである。燃料破損率は負荷追従を開始した翌年の1983年をピ−クとして年と共に減っている。また、破損を起こした燃料の破損時期と負荷追従サイクルの回数との関係が見られなかったことから、負荷追従に採用している出力変動モ−ドは燃料の健全性を損なわないと結論している。
 米国での負荷追従試験は主に1日周期の出力変動パタ−ンであるが、1週間周期の試験例も少数ある。PWRでは7基の原子炉でデモンストレ−ションが行われたが、最大では200回サイクル(1日周期)の運転例がある。BWRでは5基での試験/デモンストレ−ション及び4基での商用運転例がある。 表1 及び 表2 はそれぞれ米国におけるPWRおよびBWRでの負荷追従運転例である。
 負荷追従運転では、Xe変動やホウ素制御(PWR)の問題もあるが、最大の問題は出力上昇時の燃料破損である。出力急昇に関する主な試験研究としては以下のものがある。いずれの試験も国際共同研究で、出力急昇にともなう燃料の健全性を調べたものであり、これらの試験により、燃料の健全性が保たれる出力上昇条件及び燃料破損機構が調べられた。
(1)ハルデン計画
 1967年から始まったノルウェ−、ハルデンの重水実験炉を用いたOECD/NEAの共同研究計画で、出力調整に関しては1970年代の後半から80年代に燃料の急昇試験及び出力サイクル試験が複数回行われた。
 以下の計画は、いずれもスウェ−デン、ストドビックのR2実験炉を用いて行われた。
(2)インタ−ランプ計画(1975〜1979)
 燃焼度が23MWd/kgUのBWR標準燃料に対して、40W/cm/minの出力上昇時の挙動を調べた。
(3)オ−バ−ランプ計画(1977〜1980)
 燃焼度が31MWd/kgU迄のPWR燃料に対して、0.5〜100W/cm/minの出力上昇時の挙動を調べた。
(4)デモランプ1、2計画(1979〜1982)
 穴あきペレットやNb添加等の軽水炉用改良燃料に対して、ステップ状または40〜200W/cm/minで出力を上げ、破損限界及び破損機構を調べた。
(5)ス−パ−ランプ計画(1980〜1983)
 30〜45MWd/kgUの高燃焼軽水炉用燃料に対して、ステップまたはこれとランプの組み合わせで出力を上昇させ、破損しきい値と破損機構を調べた。
 出力急昇時の燃料破損しきい値は、最高出力、出力急昇速度及び幅、燃焼度、燃料設計等が関係するので、燃料履歴や運転条件で異なってくる。これらの試験では、燃料の健全性が保たれる最高線出力は400W/cm付近との結果が得られている。
<図/表>
表1 米国PWRの主な負荷追従運転例
表2 米国BWRの主な負荷追従運転例
図1 フランスの原子力発電所における負荷追従サイクル数、周波数制御運転時間、燃料破損数(サイクル平均)の年次変化

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<関連タイトル>
原子炉の出力変動時の燃料挙動に関する研究 (06-01-01-02)

<参考文献>
(1)若林二郎ほか:原子力発電所の負荷追従運転、日本原子力学会誌、28,p913(1986)
(2)A.Dumont,P.Bournay: FRAGEMA Fuel Performance Under Load Follow and Frequency Control Operation in EDF Plants, ANS Int. Topical Meet. on LWR Fuel Performance ,Williamsburg,USA,17-20 April,1988.
(3)L.Goldstein,K.D.Sheppard: A Survey of Load Follow Experience in U.S. Light Water Reactors,ANS Int. Topical Mtg. on LWR Fuel Performance,Williamsburg,USA,17-20 April 1988.
(4)E.Kolstad,et. al.: In-Reactor Thermo/Mechanical Measurements on LWR Fuel Rods in the High Burn-up Range,IAEA Mtg. on Fuel Performance at High Burn-Up for Water Reactor,Nykoping,Sweden,5-8 June 1990.
(5)D.Franklin et. al.: A Utility Perspective on LWR Fuel Performance,ANS Int. Topical Mtg. on LWR Fuel Performance,Williamsburg,USA,17-20 April 1988.
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