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<概要>
 昭和64年1月1日東京電力株式会社福島第二原子力発電所3号炉において、出力103万kWで運転中、原子炉再循環ポンプ(B)に振動が発生したため、ポンプを停止するとともに原子炉を停止した。同ポンプを分解点検したところ、水中軸受リング部分が軸受本体との接触部分で破損・脱落し、羽根車の一部が欠損、摩耗していた。また、羽根車等の摩耗によって生じた金属紛等が流出し、原子炉容器内に分布した。再発防止対策として、原子炉再循環ポンプ水中軸受の改善、運転マニュアルの見直し、異常徴候に対する対応の強化及び安全管理の徹底等が実施されている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.原子炉再循環ポンプ損傷事象の経緯の概略
 (1) 福島第二原子力発電所3号炉は、東京電力(株)が福島県双葉郡富岡町に設置した定格電気出力110 万kWのBWR沸騰水型原子炉)で、昭和60年(1985)6月21日に運転開始された。
   昭和64年(1989)1月1日午後7時2分、出力103万kW で運転中に2台あるうちの1台の原子炉再循環ポンプ(Bポンプ( 図1図2 参照))の振動が上昇し「原子炉再循環ポンプモーター(B)振動大」の警報が発信した。このため、ポンプ速度(回転数)をわずかに下げたところ、振動は警報値以下のレベルに低下した。その後、監視を強化して運転を継続したが、振動は不安定な状態で推移し、出力99万kWで運転中の1月6日午前4時20分、再び振動が上昇して警報が発信したため、振動レベルを監視しながら徐々にポンプ速度を下げ、これに伴って、出力も74万kWに降下した。しかしながら、振動レベルが低下しなかったため、正午から原子炉の停止操作を開始し、午後6時55分に当該ポンプを停止、1月7日午前0時0分発電機を解列、午前3時47分原子炉を停止した。( 表1−1表1−2 および 表1−3 参照)
 (2) 同3号炉は1月7日から第3回定期検査を開始したが、調査のため、当該ポンプ( 図3 参照)を分解点検したところ、水中軸受リングが脱落、破損していたほか、ポンプ内各部の損傷が認められた。( 図4 参照)また、水中軸受取付ボルト8本のうち5本と座金5個の脱落、流出及び羽根車主板の一部の欠損、流出が確認された。これら流出部品は、原子炉再循環系配管、ジェットポンプ等から座金の一部を残して、他は回収された。その後の調査等により、磨耗による金属粉等の発生量は、30〜33kg程度と推定され、その流出先から回収した量は、原子炉圧力容器、系統配管機器等から18〜20kg程度、原子炉冷却材浄化系ろ過脱塩器等から8〜11kg程度、燃料集合体から約1kg程度であった。金属粉の想定残存量は、燃料集合体等に残存しているものを除き最大47g であり、また、残存の可能性のある座金の金属片は最大4個(最大の重量1.6g/個)と推定された。
2.損傷原因及び損傷経過の推定
 (1) 水中軸受リングは、垂直の水中軸受本体に対して水平状に帽子のつばのような形状で取り付けられている。円周状に上下ともすみ肉溶接を施し取り付けられていた。事象の原因を解明するため、水中軸受リングに発生する応力、取り付け溶接部の割れの発生、水中軸受リングのポンプ内の挙動等に関し各種の模擬試験及び解析評価が実施された。
 (2) 水中軸受リングの固有振動数と水中軸受リング上下に生ずる変動差圧がポンプ速度93%で共振し、水中軸受リング及びその溶接部に大きな変動応力がかかる。このため、溶接部分が、強度上の余裕が少くないすみ肉溶接構造のうえ、溶け込み不足が認められた下側溶接部で疲労限度を上回り、割れの発生する可能性があることが判った。
 (3) 下部溶接部の一部から割れが発生・進展して、全周にわたる破断に至り、水中軸受リング全体が回転中の羽根車主板上に落下した。このことが、座金に繰り返し荷重を加えることとなり、座金の疲労破断を生じさせた。回り止めになっていた座金の脱落によりボルトが緩み、脱落したためと推定される。
3.再発防止対策
 (1) 原子炉再循環ポンプ水中軸受の改善
  福島第二原子力発電所3号炉はもとより他の原子力発電所においても、原子炉再循環ポンプ水中軸受を、強度上十分な余裕があり、検査により溶接不良を検知できる「完全溶込み溶接型」又は溶接部を有しない「一体遠心鋳造型」のものに取替えを実施する。
 (2) 運転マニュアルの見直し
  福島第二原子力発電所3号炉はもとより他の原子力発電所においても、原子炉再循環ポンプの振動警報が発信したときは、その原因が検出器の誤動作や地震の影響によるものであることが明らかな場合を除いて、直ちにポンプを停止するよう、運転マニュアルを改訂した。また、他の重要な警報についても、運転員が適切な対応と判断がより一層容易におこなえるよう、運転マニュアルを改善する。
 (3) 異常徴候に対する対応の強化
  福島第二原子力発電所3号炉はもとより他の原子力発電所においても、設備の異常徴候が認められた場合は、夜間、休日を問わず、的確な対応措置が確実に講じられるよう、対応体制の強化を行う。なお、これに関連して原子力発電所の重要な機器等については、実際に機器の損傷に至る以前にその異常徴候を検知し、的確な判断と対応が可能となるよう、回転体診断装置等の異常診断技術の開発及び実用化を進める。
 (4) 安全管理の徹底
  安全管理の徹底と安全意識の向上を図るため、社長指示を行った。また、社内各層の安全意識の向上を図るため、経営層、管理層、実務層のそれぞれについて研修等を計画的に実施する。
<図/表>
表1−1 事象の推移と対応状況(1/3)
表1−1  事象の推移と対応状況(1/3)
表1−2 事象の推移と対応状況(2/3)
表1−2  事象の推移と対応状況(2/3)
表1−3 事象の推移と対応状況(3/3)
表1−3  事象の推移と対応状況(3/3)
図1 原子炉再循環系統の概略
図1  原子炉再循環系統の概略
図2 原子炉再循環ポンプ
図2  原子炉再循環ポンプ
図3 原子炉再循環ポンプの断面
図3  原子炉再循環ポンプの断面
図4 原子炉再循環ポンプ(B)分解状況
図4  原子炉再循環ポンプ(B)分解状況

<関連タイトル>
福島第二3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象に対する原子力安全委員会等の対応 (02-07-02-07)
福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象の原因に関する調査結果 (02-07-02-06)
福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象の健全性評価結果 (02-07-02-05)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):「平成2年 原子力安全白書」 (1990)
(2)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第131 号」 (1990)
(3)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第137 号」 (1990)
(4)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第139 号」 (1990)
(5)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第142 号」 (1991)
(6)科学技術庁原子力安全局(編):「原子力安全委員会月報 通巻第145 号」 (1991)
(7)科学技術庁:「FBR広報素材資料集(2版)下巻」 (1990)
(8)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全課(編):「原子力発電所運転管理年報平成2年版」火力原子力発電技術協会、平成2年8月
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