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<概要>
 平成3年2月9日に発生した美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象について、通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁では、原因調査結果とともに、再発防止対策を次のような事項についてとりまとめた。
1.工事計画の審査及び検査対象の追加等の行政庁としての安全確保対策。
2.品質保証活動の強化等の原子炉施設設置者の自主保安の強化。
3.伝熱管疲労をより正確かつ早期に検知できる検査技術の開発等の中長期的課題の推進。
4.通報連絡体制の充実等の異常な事象の発生時における即時対応策の改善。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
  平成3年2月9日に発生した美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象について、通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁では、原子力発電技術顧問会に美浜発電所2号機特別委員会を設置し、その審議を踏まえつつ調査を進め、損傷原因に関する調査等とともに再発防止対策及び教訓事項をとりまとめた。

1.通商産業省(現経済産業省)の安全確保対策の一層の充実
(1) 振れ止め金具を工事計画の審査及び検査対象への追加等
   振れ止め金具を工事計画の審査及び使用前検査の対象に追加し技術基準を整備する。定期検査において振れ止め金具の挿入・据付け状況を確認する。
(2) 定期検査の充実
   主蒸気隔離弁及び加圧器逃がし弁等主要な機器に対する検査の充実を図る。伝熱管の管支持部における変形に係る検査を行う。
(3) 蒸気発生器伝熱管損傷事象に関する安全評価の充実
   主蒸気隔離弁の閉止に関する信頼性についてより保守的に評価する。(主蒸気隔離弁、加圧器逃がし弁の故障等も考慮する。)
(4) 品質保証活動に対する指導・監督の強化
   定期的な調査を通じ、品質保証活動に対する指導・監督を一層強化する。

2.自主保安の強化
(1) 品質保証活動の強化
   電気事業者、プラント製作者等においては品質保証活動を強化することが必要である。特に、電気事業者においては、原子力部門自らが国内外の事故・故障等に関する教訓の既設プラントへの反映、プラント製作者等の品質保証活動への監査の充実・強化を図ることが必要である。今般、電気事業者において新たに原子力部門とは独立して設置された品質保証に関する監査組織を積極的に活用する必要がある。
(2) 蒸気発生器伝熱管の健全性の向上
   振れ止め金具に対する品質保証活動の充実・強化を図るとともに、伝熱管に係る既存の損傷形態についても新しい知見、技術等を積極的に導入し、その発生の防止、抑制に努める必要がある。
(3) 保守管理方法の改善等
  a.主蒸気隔離弁関連
    主蒸気隔離弁の弁棒しゅう動部表面の粗度を確認する必要がある。主蒸気隔離弁の閉弁力を増加するとともに増締装置を設置する必要がある。
  b.加圧器逃がし弁関連
    加圧器逃がし弁等安全上重要な機能を有する機器の制御用空気系統の配置については、誤操作防止のための配慮を行う必要がある。安全上重要な機能を有する機器の作動に関連する手動弁に関して、施錠管理等誤操作防止対策を徹底する必要がある。安全上重要な機能を有する機器等の設計についても、同時に故障を起こすような原因を極力排除することが望ましい。
(4) 運転マニュアルの充実等
   加圧器逃がし弁不作動及び主蒸気隔離弁不完全閉を含む安全上重要な機能を果たす機器に異常が発生した場合の具体的な応用操作について運転マニュアルに記載する必要がある。
(5) モニタリングシステム及び計測制御システムの改善
  a.蒸気発生器漏洩モニタリングシステムの改善。
  b.事故後監視計(PAM)トレンドのシステム及びアラームタイプライタの改善。
  c.計測システムの改善(炉内水位計、主蒸気放射線計測装置の設置の検討)。
  d.プラント制御システムの改善(異常な事象の発生時における常用電源から給電される機器の活用)。

3.技術開発の推進等の中長期的課題
  検出精度の一層の向上等渦電流探傷検査技術の高度化を図るとともに、振動による伝熱管疲労をより正確かつ早期に検知できる検査技術の開発を推進する必要がある。ヒューマンエラー防止についての技術開発を引き続き推進する必要がある。実験等を通じて流動励起振動等の評価手法等の充実に努める必要がある。

4.異常な事象の発生時における即時対応策の改善
(1) 通報連絡体制の充実
   関係機関への通報連絡体制を充実する必要がある。
(2) 発電所見学者に対する迅速かつ適切な対応
   異常事象発生時の発電所見学者への対応につき、対応マニュアルを作成、運用しているが、社内訓練等を通じ一層の実効性を確保する必要がある。
(3) 放出放射能の迅速な評価
   異常な事象の発生時の発電所周辺環境への放出放射能量等をより迅速かつ的確に評価し得るようシステムの充実を図る必要がある。

5.今回の事象の再発防止及び教訓事項への対応のため以上の対策を実施するとともに、広く国民の原子力発電に対する信頼感を醸成する観点から以下の対策についても実施する。
(1) 蒸気発生器伝熱管の健全性をより一層向上する観点から、振れ止め金具部における伝熱管の摩耗減肉を抑制するため、従来型の振れ止め金具を使用しているプラントについて改良型の振れ止め金具への取り替えを計画的に行う。
(2) 蒸気発生器伝熱管破断事象が現実に発生したことに鑑み、引き続き二次系冷却水水質放射能濃度等に有意な変化が認められた場合には、原子炉の運転を停止する措置を直ちに講ずる。
<関連タイトル>
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象の概要 (02-07-02-04)
美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象の原因調査 (02-07-02-03)
軽水炉蒸気発生器伝熱管の損傷 (02-07-02-14)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):平成4年版 原子力安全白書 平成5年2月
(2)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全管理課(編):原子力発電所運転管理年報 平成4年版 平成4年8月
(3)通商産業省資源エネルギー庁:関西電力(株)美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象について、平成3年11月
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