<大項目> 原子力発電
<中項目> 軽水炉(BWR型)原子力発電所
<小項目> 工学的安全施設
<タイトル>
BWRの工学的安全施設 (02-03-04-01)

<概要>
 工学的安全施設は、原子炉冷却材系設備の破損などに起因して原子炉内の燃料の破損による核分裂生成物の放散の可能性がある場合に、これらを防止または抑制し、発電所周辺の一般公衆および発電所従業員の安全を確保する施設で、非常用炉心冷却設備(ECCS)と原子炉格納施設で構成されている。これらの施設は動的機器の単一故障または静的機器の単一故障のいずれかを仮定しても、所定の安全機能を果しうるよう多重性を有している。また、外部電源喪失時にも、非常用ディーゼル発電機の作動により所定の安全機能を果しうる。工学的安全施設の主要部分は、試験および検査が定期的に行なえる設計となっている。ABWR(改良沸騰水型原子力発電所)についても付記する。
<更新年月>
2010年01月   

<本文>
 工学的安全施設は、原子炉施設の事故時に燃料被覆管の大破損やそれに伴う核分裂生成物の放散を防止もしくは抑制するため、非常用炉心冷却設備と原子炉格納施設からなる工学的安全施設を設けている。これらの施設は、動的機器の単一故障または静的機器の単一故障のいずれかを仮定しても、所定の安全機能を果しうるよう多重性を有している。外部電源喪失時にも、非常用ディーゼル発電機の作動により所定の安全機能を果しうる。以下、基本的に標準的な110万kW(1100MWe)級のBWR(BWR-5)について記述する。135万kW(1350MWe)級のABWRについても付記する。
1.非常用炉心冷却設備(ECCS)
 図1に110万kW(1100MWe)級BWRの非常用炉心冷却系を示す。この設備は、原子炉冷却材圧力バウンダリの配管(最大口径配管として原子炉冷却材再循環系を想定)が破断し、原子炉冷却材喪失事故(LOCA)が発生した場合に、燃料の過熱による燃料被覆管の大破損を防ぎ、これに伴う金属(ジルコニウム)と水の反応(水素が発生)を無視しうる程度に抑える設備である。BWRのECCSは、低圧炉心スプレイ系(LPCS)、低圧注水系(LPCI)、高圧炉心スプレイ系(HPCS)および自動減圧系(ADS)より構成され、基本的には原子炉水位低信号またはドライウェル圧力高信号(ただし自動減圧系は同時信号)により自動起動される。
 低圧炉心スプレイ系は、低圧炉心スプレイポンプにより水源のサプレッション・チェンバ内のプール水を汲み上げ、炉心上にとりつけたスパージャ・ヘッダのノズルから燃料集合体上にスプレイして炉心を冷却する。破断口から溢流した冷却水は、サプレッション・チェンバに戻って再びスプレイ水として循環する。
 低圧注水系は、低圧注水ポンプ(残留熱除去系ポンプ)および残留熱除去系熱交換器などからなる残留熱除去系のうちの1つのモードである低圧注水モード(図2参照)を使用し、原子炉容器内に冷却水を注入する。水源はサプレッション・チェンバ内のプール水を使用する。
 高圧炉心スプレイ系は、小配管破断から中配管破断に至るまでの破断に対して単独で、被覆管の大破損を防止できる容量の冷却水をスプレイできる。水源には復水貯蔵タンク水を使用するが、復水貯蔵タンク水位が低下すると自動的にサプレッション・チェンバ内のプール水に切替わる。
 自動減圧系は、原子炉冷却材系の中小破断時に原子炉蒸気をサプレッション・チェンバ内のプール中へ逃がし、原子炉圧力をすみやかに低下させて、低圧炉心スプレイ系あるいは低圧注水系による注水を早期に可能とする。
 図3に135万kW(1350MWe)級のABWRの非常用炉心冷却系を、表1にABWRとBWRの安全設備の比較を示す。ABWRでは、原子炉再循環系にインターナルポンプ方式を採用しているので、事故解析ではBWRにおいて想定される大口径再循環配管の破断と異なり、炉心より上部に位置する中小口径配管の破断あるいは蒸気管の破断を想定している(図4およびATOMICA <02-03-13-02> 事故(BWRの場合))を参照)。原子炉冷却材圧力バウンダリのいかなる配管破断を想定しても炉心を冠水維持できるため、ECCS設計ではスプレイ方式ではなく、注水による冠水冷却方式を採用している。また高圧系注水を充実するため、原子炉隔離時冷却系(RCIC)に非常用炉心冷却の役目を持たせている。
2.原子炉格納施設
 図5にBWRの原子炉格納施設を示す。この施設は、原子炉からの核分裂生成物の放出に対し二重の防壁を形成している。第1の防壁は、原子炉容器および原子炉冷却材再循環系を格納する原子炉格納容器(PCV)であり、第2の防壁は、原子炉格納容器を収納している原子炉建屋である。原子炉冷却材配管破断の場合は、原子炉格納容器のドライウェル内に放出された蒸気と水の混合物は、ベント管を通ってサプレッション・チェンバ内のプール水中に導かれる。ここで蒸気がプール水で冷却され凝縮することによって、ドライウェル内圧の上昇が抑制され、一方、放出された核分裂生成物は原子炉格納容器内に保留される。ドライウェルを貫通する配管について、原子炉蒸気発生系統に接続されている配管およびドライウェル内の空間に開口している配管には、ドライウェル内外で2個の隔離弁を設けている。これらの隔離弁は原子炉水位低、ドライウェル圧力高あるいは放射能レベル高などの信号によって自動的に閉鎖し、原子炉格納容器からの核分裂生成物の流出を防いでいる。
 原子炉格納容器の保護のため格納容器スプレイ冷却系が設けられている。この系は、残留熱除去系の1つのモードであり、冷却材喪失事故時に残留熱除去系がまず低圧注水系として自動起動し、炉心冠水後に格納容器スプレイ冷却モード(図6参照)に切り替えて使用する。格納容器スプレイ冷却系は、サプレッション・チェンバ内のプール水をドライウェル内およびサプレッション・チェンバ内にスプレイすることによって、原子炉格納容器内の温度、圧力を低減するとともに、原子炉格納容器内に浮遊している核分裂生成物を除去する。また、燃料の過熱によるジルコニウムと水との反応で発生した可燃性ガス(水素)のドライウェル内での燃焼を防止するため、可燃性ガス濃度制御系(図7参照)を設けている。
 原子炉格納容器から原子炉建家へ核分裂生成物の漏洩を伴う事故時には、常用換気系を閉鎖し、換気ファンを起動して原子炉建屋を負圧に保ちながら、漏洩した空気は非常用ガス処理系(図8参照)のフィルタを通して、排気筒から大気中へ放散される。
<図/表>
表1 ABWRとBWRの安全設備の比較
図1 BWR非常用炉心冷却系
図2 BWR残留熱除去系低圧注水モード
図3 ABWR非常用炉心冷却系
図4 ABWRとBWRの事故解析における想定配管の比較
図5 BWR原子炉格納施設
図6 BWR残留熱除去系格納容器スプレイ冷却モード
図7 BWR可燃性ガス濃度制御系
図8 BWR非常用ガス処理系

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<関連タイトル>
原子炉機器(BWR)の原理と構造 (02-03-01-02)
BWR原子炉容器 (02-03-03-01)
BWRの原子炉冷却系統 (02-03-03-02)
BWRの原子炉格納容器 (02-03-04-02)
原子力発電プラント(BWR)の制御 (02-03-06-01)
BWRの原子炉保護設備 (02-03-07-01)
BWRの工学的安全施設作動設備 (02-03-07-02)
改良型BWR(ABWR) (02-08-02-03)

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):原子力発電所−全体計画と設備−(改定版)、平成14年6月
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂第3版)、平成20年9月
(3)火力原子力発電技術協会(編):やさしい原子力発電、平成2年6月
(4)東京電力:福島第二原子力発電所原子炉設置変更許可申請書、昭和53年12月
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