<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の立地・建設・運転・保守
<小項目> 原子力発電所の運転・保守
<タイトル>
原子力施設の検査制度の改正(平成15年改正の概要) (02-02-03-17)

<概要>
 原子力発電所の自主点検記録の不正書き換え、原子炉格納容器漏えい率検査の偽装など電力会社の不正問題が判明した。これら不正問題の再発防止と国民の信頼回復のため、事業者、国の監視・監査機能の強化を含む原子力安全規制関係省令の改正が行われた(平成15年10月1日施行)。原子力事業者による現行の自主点検を「定期事業者検査」として義務化し、この検査の体制等について新たに設立された独立行政法人 原子力安全基盤機構が審査することになった。また、原子力安全委員会の監視・監査機能が強化され、原子力発電所、再処理施設等の各種点検の実施状況が毎年度原子力安全委員会に報告されることになった。さらに、組織的不正を抑制するため重大な違反事案に対する法人重課(罰金が100倍に)の導入など罰則の強化が行われた。

(注)この検査制度は引き続き改善され、平成21年1月には保全プログラムに基づく新たな検査制度が導入されている(ATOMICA「原子力発電所の定期検査 <02-02-03-07>」他を参照)。
<更新年月>
2013年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.原子力安全規制関係省令改正の背景
 平成15年に行われた事業者、国の監視・監査機能の強化を含む原子力安全規制関係省令の改正(原子炉等規制法の一部改正及び電気事業法の一部改正、平成15年10月1日施行)の背景には、以下に示すような電力会社の原子力発電所における不正問題の発覚があった。
 平成14(2002)年8月にこの改正の発端となる東京電力(株)原子力発電所における自主点検記録書き換えなどの不正問題が判明し、原子力安全・保安院(NISA)は、原子力事業者に対し同様の問題が発生していないか総点検の実施と報告を指示した。同年9月に行われた原子力安全・保安院の立ち入り検査では問題のある案件が16件10基の原子炉(福島第一1〜5号機、福島第二1〜4号機、柏崎刈羽1号機)にあった(シュラウドにひび割れ等の疑いがある運転中の福島第一4号機、福島第二2〜4号機、柏崎刈羽1号機は地元の意向を受けて事業者の自主的判断により順次運転が停止された)。同年9月、東北電力(株)、東京電力、中部電力(株)の11基の原子炉(女川1号機、福島第一1〜5号機、福島第二3号機、柏崎刈羽1・2号機、浜岡1・3号機)の再循環系配管にひび割れやその兆候が発見されていたことが報告された(ひび割れが未修理のまま運転中の柏崎刈羽2号機、浜岡3号機は事業者の自主的判断により運転が停止された)。また、日本原子力発電(株)敦賀1号機において交換済みのシュラウドにひび割れの兆候が発見されていたことが報告された。同年10月、東京電力福島第一1号機において1991年と1992年の定期検査で原子炉格納容器漏えい率検査の偽装があったことが判明した(この不正行為に対して原子力安全・保安院は、原子炉等規制法及び電気事業法違反に該当するとして、東京電力に対して福島第一1号機の1年間運転停止を命じた)。
2.原子力安全規制関係省令の改正
 上記一連の不正問題は、品質保証体制の不備、定期検査に対する国及び事業者の役割や事故・故障の報告義務の不明確、保守管理基準の不備等に起因したものであることが明らかになったことから、主に運転段階における原子力安全規制の見直しが行われ(図1参照)、事業者、国の監視・監査機能の強化を含む、原子炉等規制法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)の一部改正及び電気事業法の一部改正が行われた(平成15年10月1日施行)。これにより、原子力事業者による自主点検の定期実施と設備の健全性評価の実施・記録保管等が「定期事業者検査」として義務化され、この検査の実施体制は国の審査を受けることになり、必要な場合には保守点検事業者から報告徴収が行われることになった。また、原子力安全委員会には毎年度、原子力施設の工事計画の認可、使用前検査、定期検査、保安規定などの実施状況が報告されることになった。さらに原子力事業者の組織的不正を抑制するため、重大な違反事案に対しては3年以下の懲役と3億円以下の罰金を最高とする罰則の強化(罰金が100倍に重課)が定められた。
A.原子炉等規制法の一部改正
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)における加工事業、再処理事業、原子炉の設置・運転等、廃棄の事業等に関する規制の一部が改正された。以下に改正の要点を述べる。
(1)品質保証体制の確立及び保守管理活動の確立
 原子力発電所等の保安規定には「品質保証活動」が記載されることになり、国はこの保安規定によって原子力発電所等の品質保証活動の実施状況をチェックすることになった。原子力事業者は、品質保証活動をトップマネジメント(経営層)によって実施し、品質保証の国際規格(ISO9001:2000)を基礎にして実施し、保安活動を計画・実施・評価・改善するPlan-Do-Check-Actサイクルにより継続的改善を実施し、社内の独立監査組織による全社的な監査を実施しなければならない。
 また、「保守管理活動の実施」が記載されることになり、国はこの保安規定によって原子力発電所等の保守管理活動の実施状況をチェックすることになった。原子力事業者は保守管理活動において、1)保守管理の実施方針・保守管理目標を設定、2)設備・機器等の分類及び保全対象範囲を設定、3)保全対象の設備・機器などに関する保全計画の策定、4)保全活動の実施と評価、5)必要な補修・取替え・改造などの是正措置の実施、6)保全計画等の妥当性評価及び継続的改善の実施をしなければならない。
(2)定期安全レビューの法令上の位置付け
 従来10年ごとに実施されてきた原子力発電所等の定期安全レビューの法的位置付けが行われた。原子力事業者による運転経験の包括的評価、最新の技術的知見による評価及び高経年化対策検討が任意事項から保安規定要求事項となった。確率論的安全評価に対しては、任意事項とするが従前どおり原子力事業者に実施が要請される。国は原子力事業者が定期安全レビューを保安規定に従って実施していることを確認する。
(3)事故・故障等の報告基準の明確化
 原子力設備の事故・故障等の国への報告について、報告すべき事象か否かを的確に判断できるよう可能な限り定量化・明確化を図るとともに、現行の通達基準の内容を含め報告基準を一本化し法令上の位置付けを明らかにした。新報告基準(実用炉規則第24条第2項の改正)の要点は以下のとおりである。
・原子炉の停止及び原子炉の出力抑制
 原子炉運転中において原子炉施設の故障による原子炉の停止または原子炉の出力低下があった場合。
・原子炉施設の故障等
 原子炉施設における安全上重要な機器などに技術的不適合があった場合または安全上必要な機能を有していないと認められた場合、火災により安全上重要な機器等が故障した場合、保安規定における運転上制限から逸脱した原子炉施設の故障があった場合、運転上制限があった場合に保安規定で定められた措置が行われなかった場合、原子炉施設の故障等による放射性廃棄物の計画外の排出があった場合及び管理区域内で汚染されたものの漏えいと被ばくがあった場合。
・放射線管理
 濃度限度を超える放射性廃棄物の排出、管理区域内漏えい、管理区域外漏えい及び線量限度を超える放射線従事者の被ばくがあった場合。
・人への障害
 原子炉施設の故障等が原因で人への障害が発生した場合(入院治療不要の場合は除く)。
(4)独立行政法人 原子力安全基盤機構(JNES)の設立
 原子力事業者の自主検査体制を審査するため、独立行政法人「原子力安全基盤機構」が設立された(図2参照)。現在国が実施している検査のうち、材料や機器の技術的使用、検査データなど専門的技術的な部分は、原子力安全基盤機構へ移管して実施される。この検査においても行政処分は今後とも国の名前で行い、国が責任を負うことになっている。
B.電気事業法の一部改正
 改正の要点は以下のとおりである。
(1)定期事業者検査制度と健全性評価の導入
 従来、事業者が定期検査期間中に任意で行ってきた自主点検を「定期事業者検査」として法令上の位置付けがなされた。新たに設立された「原子力安全基盤機構」が定期事業者検査に係る実施体制及びその検査が適切であるか等を評価する「定期安全管理審査」を実施し、国がこの審査結果を総合的に評定する。なお、定期検査は、電気事業法第54条で定めた特定重要電気工作物を対象として、事業者が行う定期事業者検査に原子力安全・保安院又は原子力安全基盤機構が立会い又は記録確認等により確認する検査と位置付けられた(図3参照)。
(2)工事計画認可対象の明確化
・原子力発電施設の設置(新増設)の工事
 安全機能の重要度分類指針におけるクラス1、2、3の機器を原則として「認可」の対象とする。
 クラス1機器:原子炉(圧力)容器、非常用炉心冷却設備、原子炉格納容器など。
 クラス2機器:使用済燃料運搬用容器、燃料取扱設備、使用済燃料貯蔵設備など。
 クラス3機器:固定式周辺モニタリング設備、新燃料貯蔵庫など。
・原子力発電施設の変更の工事
 既に設置認可を受けている工事計画との相違点に注目し、改めて設置許可との整合性や技術基準への適合性について国の確認が必要である場合、「認可」または「届出」の対象とする。
<図/表>
図1 原子力安全規制の見直し
図2 独立行政法人「原子力安全基盤機構」の設置
図3 定期検査制度の概要

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
原子力発電所に係わる法規法令 (02-02-02-02)
原子力発電所の品質保証活動 (02-02-02-04)
原子力発電所の定期検査 (02-02-03-07)
原子炉等規制法(平成24年改正前) (10-07-01-04)
電気事業法(原子力安全規制関係)(平成24年改正前まで) (10-07-01-08)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会:原子力発電施設の自主点検記録の不正等に対する対応について(平成14年10月17日、原子力安全委員会決定)、http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/kettei/20021017.htm
(2)原子力安全・保安院:原子力発電所の検査・点検等の不正問題への対応について(資料6-2-1)(平成14年12月16日)、http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g60105f03j.pdf
(3)原子力安全・保安院:原子力発電所の検査・点検等の不正問題への対応について(資料1)(2002年11月)、http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003316/0/021105gaiyo.pdf
(4)原子力安全・保安院:原子力発電所の検査・点検等の不正問題への対応に係る法律改正案について(資料2)(2002年11月)、http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003316/0/021105gaiyo.pdf
(5)原子力安全・保安院:原子力安全規制関係省令改正について(2003年10月)、http://www.nisa.meti.go.jp/text/kichouka/151001kaisei.htm
(6)電気事業連合会:「原子力・エネルギー図面集」2011年版(2011年1月)、
http://www.fepc.or.jp/library/publication/pamphlet/nuclear/zumenshu/pdf/all05.pdf
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