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<概要>
 日本の原子力発電所は、すべて海岸沿いに立地している。発電所の最終冷却を海水に依存できること、さらにサイトの片側方向には、周辺住居地帯がないというメリットがある。反面、平坦地での立地ばかりとはいかず、背後に丘陵または山塊をいだき、その裾野が海に落ち込むわずかの土地を利用している例も多い。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
 日本で運転中の電気事業用原子力発電所は、2007年度末現在55基、出力4,946.7万kWとなっており、発電電力量は2007年度実績で約2,638億3,200万kWh、2007年度総発電電力量の約26%に及んでいる。2008年11月末現在における建設中の発電所は北海道電力(株)の泊発電所、中国電力(株)の島根発電所および電源開発(株)の大間発電所の3基、建設準備中および立地計画中は10基であり、全国の原子力発電所立地地点サイトは21か所になっている。この他に運転停止中である日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」1基がある。
 図1に原子力発電所立地サイト分布図を、表1−1表1−2および表1−3に運転中および建設中のそれぞれの原子力発電所立地概要を示す。
 日本の原子力発電所立地サイトは冷却水の取水と排水に海水利用と、周辺居住地域との隔離を目的に、全て海岸沿いに設置されている(図2図3参照)。また、日本は地震の発生が多いことから、過去の地震、地質等について十分に調査を行うとともに、地震による揺れの振幅が小さく、十分な支持性能があり、すべりや有害な沈下等を生ずる恐れがない地盤に建設されている(表2参照)。2007年7月16日に起きた新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原子力発電所は設計時の想定を大きく超える約2.5倍の揺れが観測され、原子炉建屋の施設に様々な被害をもたらした。被害箇所のほとんどは耐震設計が一般のものと同じCクラスで作られているもので、運転中の原子炉は正常にスクラムし、その後は原子炉内温度が100℃以下に落ち着く冷温停止となった。しかし、震源が発電所からわずか9kmと近かったことから、発電所の立地サイトにおける活断層の追加的な詳細調査等の十二分な調査を行い、更なる地震対策として耐震補強などの裕度向上が図られている。図4に日本における活断層の分布図を示す。なお、今回の地震を受けて、発電所の健全性が損なわれていないか検証するとともに、2006年改訂の耐震設計審査指針に基づくバックチェックとして、敷地周辺の地質・地質構造並びに地震活動性等の調査を補完的に行い、地震による揺れが設計で想定した揺れを大きく上回った要因を分析し、これらを踏まえて新たに基準地震動を設定し、耐震安全性を評価することになっている。
(前回更新:2007年8月)
<図/表>
表1−1 原子力発電所立地概要(1/3)
表1−1  原子力発電所立地概要(1/3)
表1−2 原子力発電所立地概要(2/3)
表1−2  原子力発電所立地概要(2/3)
表1−3 原子力発電所立地概要(3/3)
表1−3  原子力発電所立地概要(3/3)
表2 原子力発電所の地震対策
表2  原子力発電所の地震対策
図1 原子力発電立地サイト分布図
図1  原子力発電立地サイト分布図
図2 原子力発電所配置図
図2  原子力発電所配置図
図3 原子力発電所設置立地全景
図3  原子力発電所設置立地全景
図4 日本の活断層分布図
図4  日本の活断層分布図

<関連タイトル>
原子力発電所立地に関する環境調査 (02-02-01-02)
原子力発電所の分布地図(1998年) (02-05-01-01)
日本の原子力発電所の現状(1999年) (02-05-01-03)
原子力発電所の耐震設計審査指針の改定 (11-03-01-30)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議:原子力ポケットブック 2002年版(2002年11月)、p.129−131
(2)(独)原子力安全基盤機構(編):平成20年版原子力施設運転管理年報(2008年9月)、p.24、p.29
(3)(社)日本原子力産業協会:原子力産業新聞(2008年12月4日)、p.4
(4)電気事業連合会:「原子力・エネルギー」図面集 2008年版(2008年4月)、p.72、p.96
(5)福島県生活環境部原子力安全対策課:原子力行政のあらまし 平成8年(1998年8月)
(6)総理府地震調査研究推進本部:日本の地震活動、地震関係基礎調査交付金調査対象断層(平成7?16年度)、http://www.hp1039.jishin.go.jp/danso/dansomapfrm.htm
(7)原子力安全・保安院:電源開発(株)大間原子力発電所 敷地、水理及び社会環境の概要について(平成20年3月)
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