<大項目> 原子力発電
<中項目> 実用原子力発電所
<小項目> 実用原子力発電所の概要
<タイトル>
カナダ型重水炉(CANDU炉) (02-01-01-05)

<概要>
 カナダは第二次世界大戦後に独力で天然ウランを利用する発電用重水炉の開発に着手し、カナダ独自の設計であるCANDU炉(重水減速重水冷却圧力管型炉)を完成させた。CANDU炉の特徴は、横置圧力管型構造と短尺燃料の利点を生かし、運転中燃料交換を可能にするとともに、天然ウランを効率よく燃やせることである。カナダでは発電用原子炉として、既に1960年代から標準燃料を採用した炉型の開発が行われている。2010年1月末現在、カナダで運転中のものは18基、グロス電気出力で約1328万kWeに達している。また、海外へも輸出されている。世界ではCANDU型重水炉に分類される重水炉は、43基が運転中、6基が建設中で、4基が計画中である。世界的に原子力発電の利用の機運が高まる中で、カナダ原子力公社(AECL)は次世代型CANDU炉としてACRシリーズの開発に着手し、経済性、安全性の一層優れたCANDU炉の導入を目指している。
<更新年月>
2011年01月   

<本文>
1.CANDU炉の開発経緯
 CANDUとはCANadian Deuterium Uraniumの略である。CANDU炉はカナダが独自に開発した発電用重水炉(PHWR:Pressurized Heavy Water Reactor加圧重水炉)で、炉型としては重水減速・重水冷却・横置圧力管型原子炉と呼ぶべき重水炉である。カナダは第2次大戦後の原子力開発に際し、国内に豊富に産出する天然ウランを濃縮することなく直接燃料として利用できる原子炉を自主開発する路線を選択し、CANDU炉に着手した。表1にCANDU炉の開発の歴史を示す。
 1945年の零出力実験炉の初臨界により第一歩を踏み出し、引き続きNRX(National Research Experimental)炉(1947年初臨界)、NRU(National Research Universal)炉(1957年初臨界)という研究実験用原子炉を開発、さらに25MWeの実証炉NPD-2炉(1962年初発電)の建設へと進んだ。
 このNPD-2炉の成功により、発電用原子炉としての技術的可能性が実証されるとともに、CANDU炉の設計概念である天然ウラン燃料の重水減速・重水冷却・横置圧力管方式が確立された。商業用原型炉として218MWeのダグラス・ポイントDouglas Point発電所の建設に着手し、1967年に100%出力を達成した。
 NPD-2炉及びダグラス・ポイント発電所の設計と運転経験は、カナダが商業発電用のCANDU炉の開発を進める上で大きな役割を果たした。
2.CANDUの建設と運転の現状
 表2に世界におけるCANDU型原子力発電所一覧を、表3にCANDU型原子力発電所の建設スケジュールを示す。カナダで最初に商業用CANDU型発電所の開発に着手したオンタリオ・ハイドロ社(現オンタリオ・パワー・ジェネレーション社:OPG)では、ダグラス・ポイント発電所の運転経験から、発電所サイト当り同一設計のプラント4基をユニットとして建設する方針を採用した。1971年以降ピッカリングPickering(A)発電所(542MWe×4)、ブルースBruce(A)発電所(904MWe×4)、ピッカリングPickering(B)発電所(540MWe級×4)、ブルースBruce(B)発電所(840MWe級×4)、ダーリントンDarlington発電所(935MWe×4)を逐次完成し、営業運転を開始した。また、規模の小さい電力会社では単基構成の発電所を採用し、ハイドロ・ケベック社はジェンティリGentilly 2発電所(675MWe)、ニューブランスビック電力会社はポイント・ルプローPoint Lepreau-1発電所(680MWe)を建設し、営業運転している。
 CANDU炉は発電だけでなく、蒸気供給やRI製造にも利用されている。特に、コバルト60の製造に関しては、当初、チョークリーバーChalk River研究所のNRU炉で始められたが、1970年代以降は、ピッカリングPickering(A及びB)、 ジェンティリGentilly 2、及びブルースBruce(B)でも生産され、世界全体の製造量の85%を占めている。
 2010年1月末現在、世界では43基が運転中、7基が建設中で、4基が計画中である。カナダは24基所有しているが、18基が運転中で、4基(ブルース(A)-1、-2、;ピッカリング(A)-2、-3)が休止中で、3基(ダグラス・ポイント、ジェンティリ-1、ロルフトンNPD-2)が閉鎖された。
 海外にもCANDU炉は輸出されている。ここではインドのPHWRのように、クローン機とでも呼ぶべきCANDU炉と同型のものも含めて基数を表示する。運転中の原子炉は韓国が4基、インドが15基、中国とルーマニアが各2基、パキスタン、アルゼンチンが各1基である。建設中の原子炉はインドとルーマニアが各3基、また、計画中はインドが4基である。なお、アルゼンチンの1基(エンバルセEmbalse)ではコバルト60の製造を行っている。アルゼンチンではこの他にPHWRを1基運転中、1基建設中であるが、これらは圧力容器型重水炉であり、CANDU炉とは異なる炉型である。
3.CANDU炉の概要
 図1にCANDU型原子力発電所の概念図を、図2燃料集合体(燃料クラスタ)の外観を示す。図3にCANDU型発電炉(Pickering-1)の原子炉本体構造図を、図4にCANDU型発電炉(Pickering-1)の原子炉冷却系統図を、表4にCANDU型発電炉の設計主要目を示す。
 原子炉本体は横置圧力管型で、カランドリアと呼ばれる横置円筒シェル・チューブ構造の本体と、多数の圧力管、反応度制御装置(制御棒など)で構成される。カランドリアを構成するカランドリア・タンクの内部には、中性子減速材である重水が満たされており、カランドリア・タンクの両管板をつないで水平に正方ピッチに配列されたカランドリア管の中に圧力管が収納され、この中に燃料集合体が装荷されている。このカランドリア構造の採用により、中性子減速材と一次冷却材は完全に分離されている。カランドリア管及び圧力管の材料は、中性子吸収の少ない、それぞれジルカロイ-2及びジルコニウム・ニオブ合金が使用されている。カランドリア管と圧力管の間には間隙を保持するためのスペーサが設けられ、熱絶縁のための炭酸ガスが充填されている。
 反応度制御装置には、通常の原子炉の運転、停止に使用する反応度制御系のほか、緊急停止用として独立した2系統(停止棒及び減速材中へのポイズン急速注入系)があり、これらはすべてが常温常圧状態に近い減速材領域(カランドリアタンク内)に設置されており、作動の信頼性が高められている。
 炉心からの発生熱を取り出す一次冷却系は、炉心の圧力管群を2群に分け、それぞれが独立の2ループとなっており、各ループは、蒸気発生器2基、一次冷却材ポンプ2基、及びこれらと圧力管群を結ぶ配管系により、圧力管内の一次冷却材の流れが隣接圧力管とお互いに逆向きになるよう「8の字」ループ形に接続されている。この方式の採用により、一次冷却系機器、配管の合理的配置ならびに重水装荷量の最小化が可能となり、同時に炉心の熱的バランスを良くしている。
 燃料集合体は短尺燃料棒(長さ約50cm)を多層同心円状に配列し(初期は28本、後に37本)、その両端がエンド・サポート・プレートに溶接された構造である。燃料棒は天然ウラン酸化物ペレットを薄肉のジルカロイ-4被覆管に封入したものである。被覆管内に黒鉛コーティングを施した(CANLUB)燃料の開発成功により、運転中燃料交換時の急激な出力変化にも耐えることができるようになった。
 CANDU炉の主な特徴を以下に挙げる。
(1)運転中燃料交換方式は、炉心の両横に接近した2台の燃料交換機が、圧力管の一方より新燃料を挿入、他方より受取るものである。1回の操作で圧力管内に直列に装荷される複数体(12体)の短尺燃料集合体の2/3の8体が交換される。隣接圧力管とは一次冷却材の流れと同様、燃料の挿入、受取方向が逆となるので、炉心は常に全領域にわたり、新燃料、燃焼中期及び末期の燃料が混在した状態になっており、原子炉は僅かな余剰反応度だけで運転できるのが軽水炉と異なる特徴である。この構造により中性子の有効利用ができ、天然ウランを極めて効率よく燃焼させることができる。また、燃料交換に伴う発電所稼働率の低下を防止することもできる。(ただし、保障措置の観点から、現在は運転中の燃料交換は行っていない。)
(2)圧力管に一次冷却材の漏えいが発生したときは、カランドリアとの間隙の炭酸ガス層において直ちに漏えいが検出され、その圧力管だけを交換する。また破損燃料が発生した場合、圧力管単位で検知でき、直ちに燃料集合体を取り出し、一次冷却系を清浄に保つことができる。
(3)圧力容器型重水炉と異なり、一次冷却材の保有水量が少ない。したがって一次冷却系配管破断事故時の放出エネルギーが少なく、事故時における原子炉格納容器の負担が軽くできる。
(4)一次冷却系は、軽水炉と異なり、一次冷却材に水処理を施して、機器、配管材料にはステンレス鋼より安価な炭素鋼を採用している。
(5)CANDU炉の場合、燃料集合体や圧力管の設計を変更せず、圧力管本数を増加するだけで、容易に出力の増大を図ることができる。930MWe級の発電所(Darlington)が運転中であり、下記のように1100MWe級の設計も行われている。
 なおCANDU炉では、0.9〜1.3%程度の微濃縮ウランまたはウラン・プルトニウム混合酸化物燃料を使用する場合に、原子炉設備を変えることなく燃料を燃やすことができ、かつ燃料の利用効率は30%改善される。また、ウラン235濃度が減損ウラン組成のレベルに低下するまで燃焼することができる。
4.CANDU炉開発の進展
 CANDU炉の開発を行ってきたカナダ原子力公社(AECL)は新たな市場開拓を目指し、1990年代に出力450MWe級のCANDU 3と呼ばれる中小型炉、さらに、ブルース(A)及びダーリントンに建設した大型機の経験をベースに、安全性と経済性をより高めた出力900MWe級のCANDU 9と呼ばれる大型炉の設計を行った。これらは、従来のCANDU 6炉の技術をベ−スに、徹底した合理化、新建設工法の採用等により建設費を低減して、CANDU 6炉と同等の経済性を達成することを目標としたものである。CANDU 3が先行して設計を完了したが、現在までにCANDU 3とCANDU 9の建設実績はない。
 その後、世界的に原子力発電の利用の機運が高まる中で、AECLは次世代型CANDU炉としてACR(Advanced CANDU Reactor)シリーズの開発に着手した。これは、CANDU 6とCANDU 9の概念を発展させたものであり、大きな改良点としては、冷却に軽水を用いてコストの低減を図るとともに、微濃縮ウランを用いて燃料炉内滞在時間を長くし、使用済燃料の発生量を低減したことなどが挙げられる。まず700MWe級のACR-700を設計し、さらにACR-700を大型化した1200MWe級のACR-1000を発表した。AECLはACR-1000を最新の軽水炉である第3世代原子炉の改良型(Generation III+)と位置づけるとともに、設計寿命を60年とし、受動的安全性の促進、経済性の改善、運転・保守性の向上をアピールしている。ACRの原子力蒸気供給システムの構造概念を図5に示した。
(前回更新:2002年1月)
<図/表>
表1 CANDU炉の開発の歴史
表2 世界におけるCANDU型原子力発電所一覧
表3 CANDU型原子力発電所の建設スケジュール
表4 CANDU型原子力発電所の設計主要目
図1 CANDU型原子力発電所の概念図
図2 CANDU型原子力発電所燃料集合体(燃料クラスタ)の外観
図3 CANDU型原子力発電所(Pickering-1)の原子炉本体構造図
図4 CANDU型原子力発電所(Pickering-1)の原子炉冷却系統図
図5 ACRの原子力蒸気供給システムの構造概念

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<関連タイトル>
原型炉「ふげん」 (03-04-02-09)
海外の重水減速沸騰軽水冷却圧力管型原子炉 (03-02-05-01)
重水冷却圧力容器型炉 (03-02-05-02)
カナダの原子力発電開発 (14-04-02-02)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議(編):世界の原子力開発の動向1999年次報告、2000年10月
(2)資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1999年版、電力新報社(1999年10月)、p.505-509
(3)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑 2000/2001年版、p207-209(2000年10月)
(4)原産マンスリー、No.22、16(1997.8)
(5)日本原子力産業協会(編):世界の原子力発電開発の動向 2010年版(2010年4月)
(6)CANTECH Library − AECL Technical Documents, http://canteach.candu.org/aecl.html
(7)Zhang Zhenhua and K.R. Hedges, A Brief Introduction to CANDU9 − A New Generation of Pressurized Heavy Water, http://canteach.candu.org/library/20054416.pdf(Jan. 2011)
(8)AECLホームページ:http://www.aecl.ca/Science/RR/History.htm (Jan. 2011)
(9)AECLホームページ:http://www.aecl.ca/Reactors/ACR-1000.htm(Jan. 2011)
(10)Stephen Yu, Director, An Overview of the ACR Design, Presented to USNRC, Office of Nuclear Reactor Regulation, Sep. 25, 2002, http://canteach.candu.org/library/20031202.pdf
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